集団的自衛権行使に断固反対し存在意義ある政党に

水平時評 府連書記長 赤井隆史

「限定的に集団的自衛権を行使することは許される」
「抑止力が高まり、紛争が回避され、我が国が戦争に巻き込まれなくなる」
「日本人の命を守る」
安倍晋三首相が、自分の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」の報告書を受けて、政府の考え方を示した記者会見で語った内容の一部である。この会見で安倍首相は憲法9条が禁じてきた集団的自衛権の行使を検討すると内外に表明したことになる。

各種世論調査では、集団的自衛権の行使や武器輸出三原則の廃止に対して反対する人々がいまだ多数派である。憲法や安全保障に関する民意と政府との間に乖離が広がっている。

安倍首相の記者会見を受けて、公明党の山口代表は、「これまでの憲法の考え方で対応できる部分が相当にあると考える」と述べ、集団的自衛権の行使を容認することに慎重な姿勢を示している。また、憲法の解釈変更を閣議決定で行うという首相の方針についても、「従来の憲法解釈との論理的整合性がまったくとれない分野に踏み込むのであれば、憲法改正の手続きをとるのが一つの道筋ではないか」と警戒感を示している。

安倍首相は「戦争はしない」「引き続き平和主義は貫いていく」とパネルを使い丁寧にゆっくりと国民に語りかけたが、「邦人が危機にさらされているときにいまの憲法解釈では、日本はなにもできない」、「だからこそ、『必要最小限』に絞り込むかたちで、集団的自衛権を行使したい」と考え方を説明した。

しかし、こうした事例は、すべて個別的自衛権の行使で対応できるものであり、公明の代表が指摘したとおり、「これまでの憲法の考え方で対応できる部分が相当にあり」、なにも集団的自衛権の行使に踏み込む必要のないことである。つまり、個別的自衛権の行使や警察権の行使で対応できる体制を整えればいいわけであって、集団的自衛権の行使にまで拡大させる意味はない。

これまでも、1992年の国連平和維持活動(PKO)協力法案をめぐる攻防など、憲法解釈をめぐる議論は、いわゆる“グレーゾーン事態”の解釈をめぐって、繰り返しおこなわれてきた。その時々においても「憲法の考え方の範囲内で対応できる」とし、個別的自衛権の行使にとどめてきた。つまり、あいまいにしながらも憲法解釈をかえてこなかったのが、その時々の政府だ。それを時の権力者の恣意によって、解釈され、行使されるようなことが起これば、日本が「戦争のできる国に」方向転換したと各国から捉えられることは明々白々である。

さらに日本維新の会やみんなの党は、自民党の右側の位置をとり、集団的自衛権の正当化に協力しようとしている。自民党の連立相手である公明党にいつでもかわって、手っ取り早く権力の分け前にあずかろうとするという意味で行動しているとしかいいようがない。

民主党がこれらの政党と同じようになれば、日本で多党政治が事実上消滅することになるのではないか。民主党が政党としての存在意義を持続するためには、自民党の左側に立ち、安倍政権が進めようとする憲法改正に正面から反対する以外に道はないと思う。それこそが安倍政権の暴走に戸惑っている多くの国民にとっての「選択肢」となりうるのではないだろうか。