大阪市廃止・分割案にノーを

水平時評 府連書記長 赤井隆史

「こんな短期間で、大阪市をなくすという大事なことを本当に決めて良いんですか?」というのが、5月17日に開催予定の大阪市の住民投票に対する率直な意見だ。

「大都市地域における特別区の設置に関する法律」に基づき「協定書」が3月の大阪府議会と大阪市議会での承認を経て、住民投票が行われる。大阪市24区を特別区の5つに区割りし、中核市を上回る約35万~70万の人口となり、2017年4月(平成29年)には大阪市が消滅するという中身である。

設置される特別区は、個人市民税とたばこ税、軽自動車税が主な収入の財源となり、新・大阪府(維新の会いうところの大阪都)に吸い上げられる固定資産税や都市計画税などの5税については、府の条例で定めた割合で特別区財政調整交付金として特別区に交付されることとなる。しかし、設置後3年間は、特別区へ配分されることとなっているが、その後の保証は定かでない。つまり、新しい府知事(都知事なのかも知れないが・・・)の判断によっては、いままで大阪市で使われてきた税金が、大阪市の枠を超えて府内の自治体に配分される可能性を持つこととなる。

東京都は、都内23区で東京都全体の8割をしめており、東京都の税の配分が23区に集中することとなるが、新・大阪府の場合は、府内全域にしめる大阪市内(特別区)の割合がたったの3割であることから、吸い上げられる税金が等しく特別区に降りてくるとは限らず、大阪府の一部の自治体に市内の税が配分される可能性がきわめて高いことが推測される。

淀川区や東淀川区などが区割りされる予定の特別区名は、「北区」であり、議員定数は19人となっており、現在の大阪市会議員の数をそのまま踏襲することとなっているが、これも3年後の見直しは、選挙で選ばれる区長と区議会とで区会議員定数を新たに定めても良いこととなっていることから、19人が10人や8人に定数改正されることも予想される。

地方の時代と呼ばれて久しいわけであり、地方主権に向けた改革を全面的に否定するものではない。また現在の大阪市24区の区割りがベストだとも思わない。権限と財源を地域に委ねる意味でも特別区にさらに強固な責任を持ってもらう意味での改革は、避けて通れない問題であるのかも知れない。

しかしである。結論から言えば、なにも大阪市をなくす必要はない。5つの特別区に配置される職員が12.900人、大阪府に配置される前大阪市職員が6.800人、それと当面大阪府にも特別区にも委譲できない事務を司る一部事務組合に400人、という配置が想定されている。

これを大阪府に配置予定の6.800人と一部事務組合に配置予定の400人の計7.200人で、新たな大阪市として再スタートすれば良いだけであり、なにもすべて新・大阪府に委譲する必要はない。しかも新・大阪府になったからといって急速に税収が伸びるわけでもなく、高齢化にともなう経費の加算により市民サービスが向上するどころか、台所は火の車になることは必至である。

こんな大改革をたった2ヵ月間か、3ヵ月間で判断して良いのだろうか。大阪市をなくすという行為をこんな簡単に決めてしまって良いのだろうか。各会派の市会議員の先生方も住民投票だけに委ねるのではなく、冷静に大阪市解体について、議論してみても良いのではないのか。後生に悔いを残すことだけは避ける必要があると思う。しかも住民投票で大阪市の解体が決定すれば、後戻りできないということを今一度、確認しておくことが必要であろう。

「大阪都構想」はあくまで仮称である。協定書にも「大阪都」という文字は一度も出てこないわけであり、大阪市がなくなるというのが事実なのである。

これは決して橋下大阪市長の人気投票ではない。将来に禍根を残すことになる大阪市解体にわたしたちは5月17日予定の住民投票でNOを突きつけなければならない。