「18歳選挙権」だけでなく若者が社会を担える環境を 

水平時評 府連書記長 赤井隆史

リクルートが発行しているフリーペーパーに『R25』というのがある。首都圏30km圏内(東京、神奈川、千葉、埼玉の各一部)の主要鉄道駅、東京都心10区内のコンビニエンスストア・大手書店、ターミナル駅周辺の飲食店などに設置されたスタンドで無料配布されている。

25歳から団塊ジュニア層の34歳までの男性という若い年齢層をターゲットにしており、従来型の総合週刊誌の購読者より若い年齢層を対象に発行しているようである。
政治や社会などの時事情勢の解説、著名人へのインタビューなどの記事で構成されている。

その『R25』に、「『俺は給料でオヤジを抜けない』〜若い男性たちがこうした“あきらめムード”にあることが分かった〜」と題してつぎのような記事が掲載されていた。
『R25』編集部が20〜35歳の男性会社員200人にアンケート調査を実施し、つぎのような回答が寄せられていたそうだ。
「将来、父親の収入を超えられると思いますか?」と聞いたところ、62.5%が「いいえ」と回答したという。つまり、3人に2人が父親の収入を抜けないと決めつけているのだ。日本人の平均年収は、この25年間で約100万円近く減り続けているらしく、現在は、平均420万円程度といわれている。

こうした時代を反映してか。若者は物欲をなくし、クルマなどを欲しがらなくなったといわれている。コインパーキングに配置されているカーシェアリング(クルマの共有)が流行るのも理由のひとつなのかも知れない。
これに加えて安倍政権の成長戦略といっても、一部の大企業しか賃上げ出来ていない現状にあり、若者はニートや引きこもり、せいぜいが派遣で自らの携帯代を捻出する程度である。
つまりは、若者は、“給料が上がらなくても仕方がない”とあきらめたのか、アベノミクスという幻想に失望したのか。その結果、自分の生活を豊かにしようというビジョンを持てず、それが保守化を強めている要因だとも言われている。

“嵐の授業”で一躍有名になった明治大学講師・関修さんは、こうした若者の現状について、「いまの若者の多くは出世したり会社を伸ばしたりして収入を増やすよりも、好きな趣味を楽しんで暮らしたいという考え。自分の世界に閉じこもっているのです。その結果、社会問題を自分のこととして意識できない。労働者派遣法の改悪や集団的自衛権見直しのニュースを聞いても、ワリを食うのは派遣労働者、戦地で犠牲になるのは自衛隊だ。自分ではない。と思い、政治の不穏な動きが自分に降りかかってくることを想像できないのです。その一方でネット右翼として中韓を罵倒し、ヘイトスピーチに狂奔する若者が収入を求めて思考停止になっている限り、安倍政権は今後もやりたい放題でしょう。」と語っている。

こんな現状が放置されたまま、選挙権だけを18歳にしても“若者の総保守化傾向”に歯止めがかかるはずもなく、ますますこの国が右傾化していくのではないだろうか。
この際、高い場所から見下ろすのではなく、草の根の市民目線で、「国や政権が何をしようが、自分たちの居場所、新しい共同体をつくっていこう」という新たな試みが必要だ。そうした市民活動に若い人たちを巻き込んでいく、もしくはその担い手に若者が育っていくという新たな萌芽が期待されている。新たな思考で、市民の居場所と出番を!