部落の高齢化、若い人たちの部落離れは、いまや全国的な共通の問題として挙げ
コラム | 2024年11月16日
コラム | 2016年9月28日
いよいよ臨時国会がスタートした。自民党がまとめた「部落差別解消推進法案」が、自民・公明・民進の3党で5月の通常国会で衆議院に提出され法案としては継続審議扱いとなったものが、いよいよ成立の方向でとりまとめられようとしている。
この法案は、自民党の同時の総務会長であった二階俊博氏の働きかけがきっかけとなり、政調会長であった稲田朋美氏をして、「わが党の方針は、人権擁護法案という包括的な一般法をつくるのではなくて、個別法で解決していこうという考え」と言わしめ、個別法としての「部落差別解消推進法案」がとりまとめられる経緯となった。
「部落差別解消推進法案」という名称そのものが、部落差別の解消を推進するという憲政史上はじめて部落差別という用語が使われており、画期的な法案であることは事実であるが、中身については、人権侵害に対する救済もなければ規制もない。いわば宣言法的な要素の強い議員立法である。しかし、“一点突破全面展開”という運動的視点から見てもこの法案を足がかりに、さらに人権侵害救済法や差別禁止法制定へ弾みをつけていくきっかけとなる法律である。早急なる「部落差別解消推進法案」制定を求めていかなければならないことは言うまでもない。
その法案提出のきっかけをつくった二階俊博氏が、自民党の幹事長に就任した。首相の安倍晋三氏とどの程度の関係にあるかは不透明であるが、幹事長就任以降の発言は、きわめて興味をひく内容である。
まず、そのとっかかりは、8月のテレビ番組であり、その発言内容は「女性天皇を認めないのは時代遅れだ」と言い放ったのである。次は海外の訪問先での発言であり、同行記者団に対して、「共謀罪」の国会での審議について「今国会で決めなければならないかというと、まだ時間がある」と自民党の幹事長がそこまで言うか・・・という発言を行い、続けてカジノ=IR法案についても「IRがなければ観光が維持できないというのはいかがなものか。もう少し冷静に対応し、正々堂々と国民の理解を得る努力をすることが大事だ」と続けている。
この発言のどれもが、安倍首相がこだわってきた中心とも言うべき政策に対する真っ向からの否定的な発言であり、安倍首相のメンツ丸潰れといったところではなかろうか。日本会議系の極右勢力は、女性・女系天皇には大反対で、男性・男系の万世一系主義にこだわってきていることは周知の事実であろう。また共謀罪は、秘密保護法、安保法制の延長上で官邸筋としても成立を重視してきた法案である。IRとはカジノを中核とした都市型複合リゾート施設のことで、「国家戦略特区」まで設定しようとしている安倍政権肝いりの事業でもある。
当然公明党との関係が深い二階氏を幹事長に起用することで、公明党との関係をさらに強固なものにしたいという安倍政権の方向性が垣間見られるわけではあるが、その事によって、逆に安倍政権が進めたい憲法改正・戦争ができる国づくりという大方針が進まないという皮肉めいた結果になっている。
つまりは、自民党内に歴史的に形成されてきた“保守”本流という流れと日本会議系の極右とも言うべき“右翼”との内部矛盾を引きずっての構図である。最近亡くなられた自民党幹事長や防衛庁長官・官房長官などを歴任した元衆院議員の加藤紘一氏が、次のように語られている。「政治家はナショナリズムをあおり、それを政権維持のために利用することがあってはならない、本当の愛国心は、地域社会の再生や教育の再構築で生まれる、共同体に対する愛着こそ国を愛することの原点だ」と。自民党内に歴史的に脈々と受け継がれる保守本流の流れに期待したいところである。