Vol.115 ふーどばんくOSAKAの個別宅配の試み

認定NPO法人ふーどばんくOSAKAが連携している子ども食堂の団体が70団体に迫ろうとしている。子どもの貧困という状況が一向に改善されず、厳しい生活実態のまま放置されている現状が横たわっているのか?はたまた、全国的にフードバンクという活動が認知されはじめ、大阪におけるふーどばんくも社会的に影響を持ち始めたのか?それとも両方なのか・・・などなど確かに比較的問題意識を持ち始めてから短期間の間にとりくめる地域活動として子ども食堂が定着してきていることは確かなようだ。

それにしても生活に困窮された方からの問い合わせのメールや電話が、ふーどばんくOSAKAに頻繁に寄せられている。「突然の解雇で3日間何も食べていない」「子どもに暖かい食べ物をなんとか与えたい」「身よりもなく頼るヒトもいないが、大阪にやってきた。生活保護の申請を考えているが、すぐには無理なようで、食品の提供を受けられないだろうか」といった切羽詰まった内容の相談がほとんどである。
堺にふーどばんくOSAKAが産声を上げてから5年が経過するが、こうした個人的な生活困窮の相談に対しては、相談者が住んでいる行政、いわゆる役所の窓口に生活困窮支援の係があるので、そこに行って相談して欲しい。または、ふーどばんくOSAKAと生活困窮者支援の行政窓口とで契約関係にあるので、そこに行ってもらえれば食品の提供は可能ですとの対応をとってきている。
それは、個別相談に対応するという体制が確保できないことや、そうした生活困窮世帯への個別宅配の場合の配送コストの負担がふーどばんくOSAKAでは難しいこと。さらには、食品の提供という個別フード支援にとどまらず仕事や生活全般の相談、子育てなど切り口は“食べること”からスタートするが、その後は生活全般のケースに対する相談体制を当該の行政関係者と構築できるかなど、課題が多いと言うこともあって、個別食糧支援については、躊躇(ちゅうちょ)していたのが実態だ。しかし、メールや電話は少なくなるどころか増えてきている傾向にあり、電話をとればなんとか食料を送りたいと思うのが至極当然であり、フードバンク活動にとりくむ以上、その精神は大事なところである。

今回、こうしたケースに対応しようと独立行政法人福祉医療機構の助成金を利用して、堺市域における「困窮者支援モデル事業」を実施しようと試みた。
子ども食堂や地元の生活相談などから発見される地域におけるネットワークを通じて見えてきた子どものいる生活困窮世帯に対して、食糧支援を実施しようというものだ。つまりは、地域のさまざまなネットワークから発見された生活困窮世帯に対して、配送費用をふーどばんくOSAKAが負担(独立行政法人福祉医療機構の助成金を利用)し、食糧支援を行おうというモデル事業である。
地域に潜在化している生活困窮世帯という情報を発見し、キャッチすることを通じて食糧支援を行うという事業をスタートさせたいと思っている。期間は、3ヵ月。実施予定の世帯数は40世帯を目標に月2回を基本に1回につき1週間から10日間程度の食糧を提供しようという試みである。
「本当に生活に困窮しているのか?」「無計画な生活習慣をさらに加速させることにはならないか?」「地域の相談者の発見だけで信用できるのか?」など・・・課題が山積みなのも事実である。しかも安易な食糧提供によって、自立を妨げてしまうことにもなりかねない危険性を持っていることも裏腹な課題でもある。しかし、ことは深刻である。
“貧困と社会的排除”が大阪を日本を覆い尽くぐらいの勢いで、肥大化してきている。働き方が多様化すればするほど、その網からこぼれ落ちていき、ニートや引きこもり、派遣の繰り返しなどにより、疲弊した若者や中高年は後を絶たない状況にある。しかもひとり暮らしが急増し、少しぐらい生活が荒んでいても自分さえなんとか生活できるギリギリの人たちが急増しているそうだ。
そんな事実に目を背けてはいけないと思っている。少しでも食品ロス削減というフードバンク活動の原点を活かしながら「生活困窮者支援」につなげていきたいと思っている。社会貢献とは、こうした身近な積み重ねのことを言うのだと思っている。