Vol.147 居酒屋メニューに見る知恵と工夫 ユニークな発想で多様な提案を

今年の最後のコラム・水平時評となった。
今年一年お付き合いいただいた読者の皆さんに感謝し、今年最後は“うんちく”を語らしていただいて締めさせてもらうことにした。

「いきなりステーキ」や大衆食堂と居酒屋を掛け合わせた「スタンド酒場」の登場など、外食産業の過当競争は厳しさを増しており、その工夫や知恵は驚愕的に進化を遂げているらしい。

一例を紹介すると、A3横長のメニューに文字は横書きで全ての品目が一覧できるようになっているのは男性向けだと言われており、そこには「Zの法則」なるノウハウが用いている。見る人の視線がZの文字の書き順のとおり、左上から右上へ、そして斜めに真ん中を過ぎて左下から右下へと移動する。

そのZの法則を利用しているのが、大衆的な居酒屋チェーンで、まずは、ビールで乾杯という男性客中心のお店は、単価が安いにもかかわらず原価率が10〜20%と確実に儲かるメニューの左上に並べ、そこを色で囲んで一番真っ先に目に入るような配列にしているとのこと。とにかくすぐに注文したいという男性の心理を巧みに利用するという発想だ。

左端から右へと視線を移動し、折り返すために視線が一旦止まる右端が、最も強く印象を持つ場所らしい。そこには、今日のイチオシのメニューをならべ記憶にとどめるように配列するというのが、居酒屋チェーンの戦略だと言われている。

女性の場合は、A4の縦型で表紙から順に左から右へとページをめくっていくような冊子型のメニューが好評らしく、コースやセットが本当にお得かどうか慎重に時間をかけて吟味したり、お好みで単品をチョイスしたらどうなるのかも十分に検討して注文するのが女子会のルーティンだと言われているらしい。

お酒がメインの客層と美味しい料理とそれに合うお酒を少しという客層では、メニューひとつとってみても相当の違いがあるようだ。たかがメニュー、されどメニューと感心しきりだ。

もちろん様々なタイプがおり一概に決めつけてはいけないが、こうした業界では“女性は人間関係や流行によって買うか、買わないかを考えるらしいが、男性は自分にとって役立つもの・目的を達成するものを買おうとする傾向が強い”とも言われているらしい。
男性は目的達成を急ぐ傾向が強く、女性はそのプロセス自体を楽しむ傾向があるとも言われており、そのため、男性にはより目的の情報を明確に配置するようにして、女性はネットサーフィンで様々な情報を閲覧して楽しむように幅広いコンテンツを配置することが効果的だと一般的には言われている。

メニューだけでもこれほどの知恵や工夫がちりばめられている。
わたしたちがとりくんでいる部落解放運動にもそうしたきめの細かな知恵や工夫、支部自慢・ムラ自慢が必要な時代に突入しているのではないだろうか。

高齢化と少子化が顕著に表れてきている部落で、横文字だらけの運動方針に誰が共感を覚えてくれるのか。女性が各部落に多く居住し、活動を担っている現実を捉えれば、目的を明確にした組織綱領を持つ同盟組織より、様々な情報を提供するネットワーク型のゆるやかな市民団体の方が、受け入れられる時代ではないのか。それこそメニューづくりなみの議論が必要になってきている。もっと言えば、男性型組織から女性型組織への転換というスローガンが必要、とは言い過ぎか。

地域の多様な課題に本部から示されるメニューだけで対応できるという時代ではなくなってきている。何種類ものメニューのひとつひとつがユニークな発想で自由に提案できる、そんな組織のあり様を大いに議論すべき2019年にしなければならないと思っている。
ようやく一支部一社会的起業というスローガンが定着してきた。ついで多種多様な市民活動へのアプローチに奮闘してみる年にしたいものだ。