部落の高齢化、若い人たちの部落離れは、いまや全国的な共通の問題として挙げ
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コラム | 2019年2月13日
毎日放送で2月11日に「激撮!直撃!!スクープ 秘蔵映像全て見せます」という番組が放映されたらしい。中身は、平成30年の歴史を振り返り、関西で起こった事件や出来事をとりあげるという内容で、「大阪の”ドン”銀行マンが見た素顔」として、飛鳥会事件の小西邦彦氏(当時・部落解放同盟飛鳥支部支部長)に焦点を当てて放映されたようである。
その後、あちらこちらから「大昔の話をまた報道してる」とか、「同和問題が悪の温床のように描かれている」といった電話が相次いだ。
事件から実に13年を迎えようとしており、人々の記憶からも薄れてきており、小西氏自身も2007年(平成19年11月)に亡くなっている。
それを平成というひとつの時代が終わろうとしているタイミングで関西を中心にして起こった事件として、平成30年間の際だった事件のひとつとして飛鳥会事件がとりあげられたのである。確かに事件発覚当時、社会に与えた影響は大きく、部落解放運動の信頼も大きく崩れたきっかけとなった事件でもあり、その後の同和行政の行方を大きく後退させることにつながった事件でもある。
平成の時代の一区切で事件を振り返るというテーマにおいて、飛鳥会事件をとりあげなければならないという放送局側の判断もわからないではないが、どのように放映しようとも部落問題に対するマイナスイメージを拡大させることはあっても、差別をなくすというプラス面の効果は皆無に等しいのではないかと思われる。報道の自由を抑制すべきではないことは言うまでもないが、マスコミとしての社会的使命から見ても、「なぜ、いまさら」「この期に及んで振り返るべき事件なのか」という疑問を投げかけておきたい。
わたしたちは、同和行政に関する幾つかの不祥事に対して、猛省し、社会的信頼の回復に努めてきたつもりだし、信用失墜という地に墜ちた段階から一歩一歩信頼回復に向けて、努力を積み重ねてきた。今回の番組報道は、こうした一連の努力をほんの20分程度にまとめて放映することで、水泡に帰すことにつながりかねないほどの大きな影響力を持って、放映されたというマスコミとしての社会的責任を今一度確認してもらいたいと思うのである。
大阪の被差別部落は、各地で社会福祉法人を設立し、高齢者や障害者支援にとりくんでいたり、子どもの居場所づくりの一環としての子ども食堂の活動を展開したり、隣保館の運営についても自分たちで受け皿の法人をつくり、自主運営にとりくんでいる地域もある。世のため、人のためという理念で、フードバンク活動を提唱し、ふーどばんくOSAKAを立ち上げ、現在では、認定NPO法人として活躍している。さらには、ネット上の人権侵害に反対する取り組みとして、ニューメディア人権機構を2000年からスタートさせ、2014年に認定NPO法人として認証されている。
また、子どもを地域で守るという発想で新たな教育運動を提唱し、NPO法人ネム21を立ち上げ、基金事業の取得などにとりくんでいる。
こうした活動の展開のひとつひとつは地道な活動だ。それが、テレビという媒体を使い、「同和問題と暴力団」「利権と解放運動」「行政との癒着」という視点での報道番組がもたらす負のイメージは、少しずつ信頼回復に努めてきたわたしたちの努力を一気に崩れさすほどの効果を持っていることをマスコミ関係者に理解してもらいたい。
いまだ社会には差別が存在し、被差別部落を排除の対象に見据え攻撃してくるひとたちが存在する。「同和は怖い」といったイメージや、「同和問題はアンタッチャブル」といった世間が持つ差別意識とテレビの報道番組とが合致することによって、間違った意識が拡散させる危険性を持っていることにもマスコミ関係者は、気づいてほしいのだ。
平成の時代を振り返る企画がこれからあちらこちらで散見されることとなるだろう。
その中にあって、生活に困窮しながら地域で助け合い、お互い様の精神で、支え合い生き抜いている地域が、大阪各地に存在している事実を視聴者に届けることも報道機関の社会的使命であることを強く訴えておきたい。