Vol.181 新型コロナ禍 生活崩壊防ぐ実践は待ったなし

新型コロナウィルス感染による緊急事態宣言も解除され、感染拡大防止対策と経済活動の両立をめざしながら明日の大阪をめざすという段階となった。しかし、今年の秋から冬にかけて二次、三次の新型コロナ禍が予想されており、長期戦を覚悟しなければならない嵐の前でもある。

新型コロナ禍をどう捉えるかについては、この間幾度となくコラムで指摘させてもらったので、この号では解放同盟自らが新型コロナ禍に対してどんな実践を提案するかを紹介し、問題提起したいと思う。
 
提案内容は、ふたつだ。そのひとつは、部落内の急激な生活危機への即効的な対応である。
つまり、これから部落に現れようとする新型コロナダメージによる生活の危機に対して、どのような支援策を打ち出すかである。

府連はそのために闘争積立金を切り崩して新型コロナ対応の資金として組み入れたいと考えている。一律10万円の「特別定額給付金」も即効的な対応が効果を挙げるものではあるが、未だ申請書が手元に届いている世帯は少なく、現金が口座に振り込まれる時期を考えると、それこそ“後の祭り”感は否めない。緊急性を要するという観点から生活支援として10万のつなぎ融資を制度化することを検討している。

また、ふーどばんくOSAKAとコラボして緊急に食料が必要な家庭への宅配型食糧支援にとりくもうと企画している。最大2週間の食糧支援のパッケージをつくり、支部を通じて個人宅への支援をするというものだ。

さらには、学生に対するSOS緊急支援の検討や雇い止め、失業者に対する支援金と次の就職に向けて、A’ワーク創造館やBサポート、Cステップと連携した就労に向けた支援の継続などが検討されている。

ひとり親家庭に対する相談窓口を設けて一時支援金の支給を通じて、就労の相談や生活全般の悩み事などに答えていこうというメニューも企画されている。

もうひとつは、中小零細企業とそこで働く人たちへの支援であり、産業支援と就労支援の一体的応援策の確立である。政府による二次補正予算が発表され、休業補償の上限を高くしたり、無利子無担保の中小企業支援が整備されようとしているが、果たして即効性が担保されているのか、この間の政府の後付け政策を考えてもかゆいところに手が届くような効果的な支援策となり得るのか不安感は免れない。そこで、大阪府連と企業連とがタッグを組んで、「いのち・笑顔・応援プロジェクト」を発足させ、中小零細企業への応援とそこで働く人々に対する緊急支援のとりくみをスタートさせることとなった。

大阪市内の中心部に事務所を設置し、新型コロナ禍にともなう業績の悪化に対して、休業等の補償手続きへの相談・誘導からスタートさせ、融資の相談、雇用調整助成金の活用・申請方法、資金繰り支援などの個々のケースについてきめ細かな相談・支援体制にとりくむ短期間のプラットホームを設立しようという提案だ。当面6月から9月までの期間と位置づけ、総合的な中小零細企業の応援団を発足させようというものである。

いずれもが、新型コロナ禍による被害状況をキャッチする力が試される事業でもある。本当に困っているひとの情報を一元的に受け入れる求心力が解放同盟支部にあるのかが問われる問題だ。社会運動や市民活動が奔走し、本当の新型コロナによる被害者や支援者を発見できるのか。この課題にチャレンジしてこそ部落解放運動の出番である。

現場の部落解放運動と自治体が連携できる公と民との役割分担が、新型コロナ問題を契機に“見える化”させることが出来る絶好のチャンスでもある。

吉村大阪府知事は、「医療体制の維持と経済活動の再開を両立させる」と提案した。そこで社会運動や市民活動がもうひとつの分野、「新型コロナ禍による生活崩壊を食い止める」という新たなチャンネルの政策を提案する事が重要である。医療も経済もいのちを守ることを最優先しなければならないことは言うまでもない。しかし、このまま失業や、廃業、生活苦が続けば、いのちが脅かされる可能性さえ危惧されている。これを食い止める政策が必要であり、それは実践を通じてでしか問題点を明らかにさせることが出来ない課題でもある。

まずは、部落から共済事業の拡大で、しっかりと地域住民と向きあう機会をつくり、新型コロナ問題が社会にどんな課題を突きつけているのか、明らかにしてみたい。また、中小零細企業者の皆さんは、明日への希望を持った経営にどんな支援策が効果的なのか、検証してみたい。

緊急事態の本格的解除へ、いざ出番のようである。