水平社100年に向けて運動のあり方議論を深めて

2021年新たな年の幕が開けた。

昨年は、新型コロナウイルスの世界的大流行からスタートし、アメリカ大統領選挙による民主党バイデン候補の勝利、首相の突然の辞任によって実に7年半にも及んだ第2次安倍政権が終わりを迎え、それを引き継ぐように菅政権が誕生した。

また、大阪においては、「大阪市廃止・特別区設置」の賛否を問う2度目の住民投票がおこなわれたが、再度の反対多数となるなど、まさに時代の転換ともいえる激動の2020年となった。

有効な手立て確立できず

部落解放運動という立場で昨年を見た時、コロナ禍という共通した疫病とはいえ、これに対抗する方針も政策も最後まで有効な手立てを確立させることが出来なかったことを反省したいと思っている。

リモートによる会議の開催やネットを使った情報発信などにとりくんだものの有効な対応策としては不十分であり、コロナ禍における各部落での緊急支援としてのエコー共済メニューの豊富化、緊急の支部への活動支援金の拡充、大企連による一般中小零細企業への相談窓口の開設など、どれもがコロナ禍への対応という点では、成果は乏しく有効な手立てが確立されたとまでは言い難い現状だ。

いずれは、ワクチンや医療分野の進展によって、コロナウイルスが沈静化していくこととなるだろうが、新たなウイルスは今後も人類を脅かす脅威となることは必至であり、緊急時における部落解放運動が、疫病を前にあまりにも無策で、不要不急でしか対応できない虚しさを痛感した年でもあった。

あらためて危機的状況における地域での市民活動の方法など情報交換しながら共有していく運動の展開を方針化させる事が求められるだろう。

大会の中止、機関会議の延期・書面による開催など、すべてにおいてコロナ禍に対する自粛対応のみが先行し、コロナ禍を進化のためのチャンスと捉え、運動そのものをこの際転換させる絶好の機会と受け止め改革を断行するという方向に舵を切っていくことが部落解放運動に求められていた道筋であったと捉えるべきではないだろうか。

2021年、ポストコロナやウィズコロナといわれる年を部落解放運動ニューノーマル時代元年と位置づけ本格化させる年にしようではないか。

組織、支部、綱領・規約、同盟員の位置づけも

そこで、水平社結成から99年の年にあたる本年を部落解放運動ニューノーマル時代元年とするためには、組織そのものの形態を改革し、府連と支部との関係、綱領・規約の評価と改訂に向けた検討、同盟員の位置づけなどを大いに議論する年とし、水平社結成から100年の2022年にその方向を提案するぐらいにまでは議論を深めたいと思っている。

大阪における部落解放運動の歴史を振り返れば、組織の形態を見た時、部落出身者であるという血統を中心において組織したと言うよりは、被差別部落という地域を基本として組織してきた面が強く、地域世直し運動、あるいは貧困からの解放を求めるという運動が大阪の礎を築いたといっても過言ではない。

この地域共生のまちづくり運動という強みをさらに発展させ、地域福祉と地域教育、地域における就労支援の市民活動をつくりあげ、重層的にさまざまな人々がつながりあうネットワーク型の部落解放運動の創造が急がれる。当然のこととして部落解放同盟組織そのもののありようも変化することは言うまでもない。

府連は、そうした運動の方向を「一支部一社会的起業」として呼びかけ、休眠口座へのエントリーや大企連によるCBアシスト事業を創設し、各地区への支援に乗り出している。しかし、すべての大阪の各部落で熱心に事業へのエントリーへの検討が進められ、企画書づくりにとりくまれているのかといえばそうではない。2021年はすべての地域や支部で、何かにチャレンジしているという現実味ある年としたい。

法規制、地域社会、政治へのスタンス

最後に今年一年府連としての闘いの方向を4点強調したい。

まず第1点は、「差別を法的に禁止する」という世論構築と具体的成果をめざす年としたい。
自治体的には条例の検討であり、国においては法律の制定である。コロナ差別への自治体対応などを参考に、大阪における「差別の法的禁止と被害者救済」制度の確立にとりくんでいきたい。

第2点は、「違いを認め合い地域共生社会たる市民運動」にとりくむ年とすることである。
誰もが社会的存在として認め合い、一人ひとりの尊厳が尊重されるような地域社会の建設にむけ、自分たちでつくりあげようという気概を持った地域における部落解放運動にチャレンジする年としたい。

第3点は、生活圏域からの政治スタイルを確立させるという挑戦である。
REAL OSAKA(リアルオーサカ)を結成し、対立という政治的スタンスではなく、政策提言としての政治団体として役割を果たすという方向で運動を積み上げていくことが確認された。また、昨年2月には、政党の枠を超えて地域から人権施策と地域課題の解決にとりくむ地方議員のネットワークとして「おおさかヒューマンライツ自治体議員の会」が結成された。

どれもが生活圏域からの民主主義をつくりげる政治スタイルである。こうした運動の基盤をさらに積み上げ、住民投票後の大都市制度のあり方、新自由主義により拡大した格差や貧困を排した包摂型の人権のまちづくりの創造に向け、奮闘する年としたい。

第4点は、水平社結成100年まで残り1年、「人の世に熱あれ。人間に光あれ」と提唱された水平社宣言にふさわしい組織と運動へ、改革断行あるのみである。多くのマイノリティの人たちの権利回復と人間としての誇りを呼び起こした部落解放運動の先進性をこの大阪の地から発信していくための2021年にしようではないか。すべての関係者にご支援とご協力を訴える。