Vol.201 多様化する大阪の部落 地域の実態に沿った運動を 

来年2022年は、全国水平社創立から100年の年を迎える。

府連は、「水平社101年目からを展望する」と題して連続講座を開催することとなった。実態編として5回、歴史編として3回の8回に及ぶ連続講座が企画されている。

第1回目として大阪市立大学の島和博さんにお願いをし、「『変わる部落』現在の部落の実態」についての講演会を開催した。もともと雑誌『部落解放』に島さんの論文が掲載されていたこともあり、大阪の都市部落を中心とする実態が、それこそ多様化しており、一様に貧しいという言葉で表現できない凹凸が、大阪の各部落に起こってきていること。平均値をとれば「総じて貧しい」という結論に至るもののその変遷の過程においては、相当の違いが出てきているということを改めて確認させられる講座であった。

失業率ひとつを見ても25%を超えようとしている深刻な地域と5%に満たない地域も存在している。
また、高齢者の単身世帯比率を見ても30%にせまろうとしている地域と10%を切っている地域などが散見されており、母子家庭比率を見ても地域差は3倍以上にも膨れあがっており、いわゆる「同和地区」を一括りにして、“貧困と社会的課題が集中していたまち”と、もはや均一に語ることのできない現状だと言うことを客観的な数字から説明された。

あらためて大阪の各被差別部落は、変化・変容しており、地域課題がその地区固有のものとして捉えるという視点が求められてきていることを教えられた。

つまり大阪の各部落は、昔から住み続ける部落にルーツを持つひとたちに加え、何らかの理由で部落に転入してきたひとたち。さらには、一時的に部落に居住し、永住が目的でないひとたち等、様々な階層が一時的な生活空間として“雑居”することで、都市型の被差別部落が形成されていると論じている。

たしかに40年や50年前の被差別部落は、すべての世帯や個人が一様に貧しき最下層と表現できるほどの貧困と社会的排除が部落を覆い尽くしていた。その時代と現在とでは相当の乖離が生じていることに違いはない。しかもそれが、ひとつひとつの部落に固有で、単独でその地域にだけ実態が爆発的に集中しているという現実がある。この何年かをさかのぼっても転入者比率、つまり地域に入ってくる人の数が、大阪市内の部落でもほとんど人口移動が確認されない地域も存在している。反対に、転入者比率が40%にせまろうかとする大阪市内の部落も出現してきており、なぜ、そのような人口移動に格差が生じるのか、もう少し突っ込んだ調査が必要ではあるが、現実的には、「ひとびとの移動」のボリュームが地域によって、大きく異なってきているという現実を直視することが重要である。

府連に結集する47の支部。いわゆる大阪の各被差別部落は、特措法33年間の成果として、社会的に貧困層と言われる階層のひとたちを磁石のように引きつけてきた部落と、30年以上ほとんど流入してくる人たちがいない部落、流入してくるひとたちによって、貧困率が少し改善された部落など、多種多様になってきたと捉えるべきだと主張したい。一様に貧しき部落からそれぞれの課題に違いが出てきているという時代だと理解して、一支部一社会的起業で、地域共生を創造する市民運動をそれぞれの特色を活かして、それこそ支部自慢・ムラ自慢の活動を思い描いていきたいと思う。府連は、その応援団長として、各支部や地域を応援していくというスタイルをさらに探求していくことが求められていると思っている。

つまり、大阪の部落は、多様化しており、“雑居”だと言うことを認識した上で、さまざまな社会的困難を抱えたひとたちが各部落で生活を営んでいると捉え、地域における社会連帯活動に取り組んでいこうという運動スタイルに大胆に脱皮すべきだと強調したいと思っている。

社会共通資本といわれる隣保館をはじめ公営住宅やもろもろの公的施設が各部落に存在しており、これを共通の社会的資本と捉え、市民協働で利用から運営に至るまで、地域創造型の市民主導による管理運営といった方向に切り替えていき、すべての地域住民の拠り所となり得る市民参加型の部落解放運動をさらに拡大させていこうという提案だ。

「社会を変える」「差別をなくす」。この実践を地域から共に住んでいるひとたちと共通の社会共生・連帯の市民運動として構築していこうではないか。