部落の高齢化、若い人たちの部落離れは、いまや全国的な共通の問題として挙げ
コラム | 2024年11月16日
特集 | 2012年10月1日
マンションなどの建設予定地周辺の立地条件を調査するマーケティングリサーチ会社(大阪市内)が、同和地区の所在地などの情報を報告書としてまとめ依頼主に提出していたことが明らかになった。
差別的な報告書を作成していたのは東京に本社のある調査会社の大阪事業所。不動産の新聞折り込み広告をつくる広告代理店やマンションのディベロッパー(開発業者)などから依頼を受けて、建設予定地周辺の地域評価や価格の動向などを調査。報告書にまとめる際、「立地特性」などの項目として、「同和問題に関わってくる地域」「指定地域」「解放会館などが目立ち敬遠されるエリア」「地域の名前だけで敬遠する人が多い」などの表現を用いて同和地区の所在を報告していた。
解放同盟大阪府連が独自に入手した報告書には▽大阪市内の部落を地図上で示し「一部問題がある地域(○○1~2丁目)」と記述し、周辺で最も低い評価をつけているもの▽府内の部落の地名をあげ「具体的には○○町で、旧・○○部落があり、市営改良住宅化されている。解放会館などアイテムも揃っている」として部落であること強調しているもの▽行政による同和地区指定のない、いわゆる未指定部落についても「要注意地区」として低評価をつけているもの、などがある。
また府内のある市の報告書では、すべての校区を調査したうえで、「率直に同和問題に関わってくる地域」などとして、部落を含む校区に低評価をつけているものもあった。
大阪府は個人情報保護条例に基づいて調査。同和地区かどうかという情報は個人情報のなかでも極めて慎重に取り扱うべき情報(センシティブ情報)であり、また資料のなかに差別表現が含まれていることから、差別意識を助長するおそれがあるとして同社から事情聴取。同社は事実を認めて府の指導にしたがい、問題表現のあるデータを消去するとともに、府に改善報告書を提出。反省と再発防止に向けた取り組みを約束しています。
解放同盟大阪府連にも同様の情報提供があり、解放同盟大阪府連は独自に資料を入手。2008年11月に同社との確認会を持つとともに、同社の調査員からの聞き取り調査を実施。そこでも同社は事実を認めて謝罪し、全容の解明に向けて協力していくことを約束した。
その後の調査ではこの調査会社と同様の差別調査・報告を行っていた調査会社は複数存在し、また大手に広告代理店やディベロッパーの多くがこうした差別報告書を数十年にわたって漫然と受け取り続け、差別が差別を生み出す仕組みが業界内に根付いていたことが明らかになった。
問題の報告書にはマンションの建設予定地を含む市区全体の価格動向や今後の予定動向、立地特性などが克明にレポートされ、差別報告は主に立地特性のなかで行われていた。そこには地域性、学区評価などの項目があり、エリアごとに10点満点で評価付け。その根拠の材料として「○○部落」などの直接的な表現はもとより、「要注意地域」「その類の問題」などの表現で、その地域が同和地区であるなどと報告していた。こうした調査報告書はひとまず広告代理店に提出され、ディベロッパーに提出されるときには、差別的な記述には手が加えられ、巧妙な言い換えがなされているものもあった。
宅地建物取引において、同和地区を問い合わせたり、物件が同和地区にないことを条件にしたりするなどの土地差別行為が後を絶たない。言うまでもなくこうした行為は人権侵害である。
大阪府は1993年3月に「宅地建物取引業における人権問題に関する指針」を策定(2008年4月改訂)し、大阪府や業者・業界団体の責務を定めた。
しかし、その後も役所などへの同和地区の問い合わせ事件が後を絶たないことから、2007年1月、宅地建物取引業者に対して通知を出し、不動産物件が「同和地区にある」、「同和地区と同じ校区にある」といった情報を収集したり、教えたりする行為は府個人情報保護条例第47条に違反するとした。
こうした取り組みにもかかわらず、水面下では長年にわたって差別調査が行われ、漫然と報告書がやりとりされていたのである。
その後の真相究明の取り組みにより、複数の調査会社、広告代理店、ディベロッパーが数10年にもわたって、土地差別調査を行い、報告書を受け取り続け、差別が差別をうむ仕組みが業界に蔓延していたことが明らかになった。
こうした事態を受け、大阪府ではこれまで興信所・探偵社を対象として部落差別につながる調査を規制してきた「大阪府部落差別調査等規制等条例」を2011年10月に改正。全国ではじめて土地に関する調査を行うすべての事業者を対象として「土地差別調査」を規制する条例が施行された。
業界団体自らも部落差別を自らが拡大再生産してきた責任をふまえて「大阪不動産マーケティング協議会」を設立。条例で規制されるよりも厳しく自らの業務をチェックする体制づくりに取り組んでいる。