部落の高齢化、若い人たちの部落離れは、いまや全国的な共通の問題として挙げ
コラム | 2024年11月16日
コラム | 2024年5月28日
2024年5月1日、大阪地裁で「部落探訪」の削除を求めていた仮処分が決定され、記事の削除を命じるとともに、記事・写真のすべてについてウェブサイトへの掲載など一切の方法による公表もしてはならないと命じた完全勝利の決定が下された。
一支部・一地域として全国で最初の裁判闘争を闘い抜く決意を固め、地域全体へ「部落探訪」が如何に差別・偏見を煽る悪質な差別投稿であるかを徹底して地域内外に訴え、ネット上の理不尽な行為に対して、地域での怒りを共有し、裁判闘争を闘い抜いた富田林の地域のみなさんに敬意と感謝を表するとともに、この勝利がまだ第一歩であり、これからが本格的な裁判闘争に突入していくことをあらためて覚悟していくものである。
決定書は、当該記事に対して「本件地域の居住者等に対する差別を助長するものであり、本件記事が公表されて誰でも容易に閲覧することができる状態になることは、本件地域に居住する債権者に対して、上記認識を基にする差別的な扱いを受けるおそれの中で生活することを余儀なくさせるものである」と断罪し、続けて「差別的な扱いを受けるおそれなく平穏な生活を送ることができるという債権者の人格的な利益を侵害するものであるといえる」と差別されない権利について言及した画期的な判断となった。
この仮処分の決定という判断は、マスコミも大きく取り上げ、新聞はもとより、テレビなどでも放映され、注目の高さが伺えるものとなった。埼玉や新潟で闘われている「部落探訪」削除の裁判にとっても追い風となり、完全勝利をめざしているわれわれにとっては、幸先の良い滑り出しである。加えて地元、富田林市にとってもこの仮処分の決定により、行政も後押しされたようで、「インターネット上の誹謗中傷や差別等の人権侵害のないまちづくり条例(仮称)」制定への気運が一気に高まり、まずは議員提案で成立させようという状況にまで高まってきていると報告されている。
この「インターネット上の誹謗中傷や差別等の人権侵害のないまちづくり条例(仮称)」は、インターネットの普及は歓迎するものの拡散性や非対面性その他の特性に起因して、使い方や投稿の表現によって、誤った情報や嫌がらせによる風評被害が瞬時に拡大し、人権が侵害され、誹謗中傷等で心が傷つき、最悪の場合、自ら命を絶ってしまう事態を招くこともあると指摘し、安全で安心な地域社会を実現することをめざし、この条例を制定すると結ばれている。
結果として、裁判に打って出るというきわめて重い判断をして、地域住民のへの理解や協力を呼びかけ、弁護士メンバーとの丁寧な打合せを積み重ね、この「部落探訪」のどこに問題点があり、差別を助長拡散している表現や説明ヵ所などを指摘するというひとつひとつの地元富田林支部のこうした努力が功を奏する形で、仮処分決定がされ、そしてネット規制の条例制定にまで結びついたことをともに喜び合いたいと思う。
確かに仮処分決定が出され、記者会見にのぞみその反響たるや想像をこえるマスコミ報道であり、鳥取ループ−示現舎は即座にネット上から差別投稿を削除するという結果となった。裁判での決定がこれほどのインパクトを持ち効果ある対応となったことは、裁判闘争に踏み込んだ最大の成果だと言えるだろう。しかし、あくまで特定の個人の被害を明らかにし、名誉毀損・損害賠償請求が基本となっているのが、裁判である。部落解放同盟という団体が原告として認定されないという裁判制度の限界もまた裁判闘争から見えてきた課題でもある。被差別部落の地域がネット上にさらされているという現実は、何も個人が差別され、名誉毀損・損害賠償という範囲にとどまるものではない。
大阪の各部落がネット上にさらされ、この地域の産業が侮蔑されたり、同和地区に建てられた隣保館などの公的施設が、無駄遣い税金の垂れ流しなどと批判され、また、この地域には○○や○○という姓が多いなど、部落特有な姓などを揶揄する差別投稿そのものをネット上から削除するための闘いであることを再確認しようではないか。わたしたちは侮辱の意志を持って差別するという相手に対して、個人でしか裁判で争えないという限界に対して、包括的な人権侵害救済の法律と差別を禁止する法律の制定という新たな法制定への議論にバージョンアップさせていく闘いの方向がますます求められることとなってきた。
部落差別が属地という一定の地域の範囲を侮蔑し、差別される対象としてネット上にさらし、こうした不毛な地域がいまもなお全国に散在しているという偏見に満ちた差別情報を垂れ流し続ける差別者に対して、その差別性と問題点を世に問う闘いをさらに前進させようではないか。さらなる奮闘を訴える。