府内すべての「部落探訪」削除を 府連が大阪地裁に提訴

被差別部落で無断で撮影した写真や動画をインターネット上に掲載して差別を拡散してきた「部落探訪」を運営する鳥取ループ・示現舎に対して府連は富田林支部の男性とともに7月8日、未指定地区を含めた大阪府内のすべての記事・動画の削除と1100万円の損賠賠償を求め大阪地裁に提訴した。

今回の提訴は富田林支部の70代男性と府連が原告となり、▽大阪府内で晒されている「部落探訪」の40(うち未指定地区は8)の記事の削除、▽有料サイトのJINKEN・TVの25(うち未指定地区は4)の動画の削除、▽あわせて1100万円の損害賠償を求めた。

提訴のため大阪地裁に向かう原告団

提訴後おこなわれた記者会見には赤井隆史委員長、富田林支部の男性、弁護団の中井雅人、南和行、小野順子の各弁護士が出席した。

赤井委員長は「ネット上に晒される行為を止めたいと富田林支部の男性が仮処分を申請し削除命令が下された。今回、府連が府内全域のすべての記事の削除を求めて提訴することになった。埼玉、新潟でも県連が主体となってすべての記事の削除を要求している。仮処分決定の内容をそのまま他の地域にも当てはめてほしい」と語った。

富田林支部の男性は「法廷に立ち、差別に抗議したらさらにネット上に晒された。差別が存在する社会の中でネット上で偏見をあおり、暴露する行為は許せない。声を上げた人の地域しか削除されないのはおかしい。差別を受けない権利を求めていきたい」などとのべた。

中井弁護士は提訴内容について説明し、「ネット上に晒される行為が許せない気持ちがあったとしても家族や親族、地域の理解、協力なしに簡単に手をあげることはできない背景があり、そういう悔しい思いをしている多くの仲間、地域住民の存在が、府連が原告となる大きな理由である」、南弁護士は「富田林の原告が提訴した後、晒し行為の二次被害にあっている。現行の裁判制度が個人の被害を前提とし、法人・団体としての人格権、権利侵害を認めにくい構造となっている中、部落差別解消のために闘ってきた歴史がある部落解放同盟大阪府連が原告になることに意義がある」などとのべた。小野弁護士は「ネットを通じた人権侵害は様々な場面で社会問題になり命を落とす人もいる。差別されない権利を求めるとともにネットを通じた人権侵害をどのように是正していくのか考える前例をつける闘いにしていきたい」とのべた。

府連はこの裁判を47支部総体の闘いと位置づけるとともに、悪質な差別行為に対して、被害者側が時間と費用をかけて裁判で闘うしか手段のない現状の人権救済制度の不備を世に問い、国内人権機関の設置を含めた包括的な反差別法の制定につなげるとりくみを進めていくとしている。