部落の高齢化、若い人たちの部落離れは、いまや全国的な共通の問題として挙げ
コラム | 2024年11月16日
コラム | 2013年1月15日
新たな年を迎えた。
昨年2012年は、全国水平社創立から90年という節目の年であった。
大正11年3月3日、全国から被差別部落の代表約2,000名を集め、京都の岡崎公会堂で開かれた全国水平社の創立大会で採択された宣言されたのが、かの有名な「水平社宣言」である。「人の世に熱あれ、人間に光りあれ」で結ばれるこの宣言は、差別されてきた被差別部落の人びとが人間の権利と尊厳を獲得し、自らの力と団結によって解放をめざすことを謳った「日本ではじめての人権宣言」といわれている。
この「水平社宣言」はよく知られるところであるが、そもそも組織の名称である「水平社」の由来はどこから来たのだろうか。部落差別の厳しい時代。なぜ、当時の活動家は、「部落解放」や「差別撤廃」といった具体的な課題を組織名にしなかったのか。そこから当時の運動が求めた理想を考えてみたい。
そもそも「全国水平社」という名称を提唱したのは、阪本清一郎氏と言われている。「あらゆる尺度というものは人間が作った。そしてその尺度によっていろいろな差が出てくる。絶対に差ができないものは水平である。平等を表現するのは水平ということば以外にはない」「人類は平等でなければならない、今の平等は平等ではない。公平であるかどうかということを見るにはいろんな尺度がある。しかし、どんな計器を持ってきてもそれに勝るのが、水の平らかさである、それ以上の尺度はない」といった理念から「水平社」という名称が決定された。
91年前にめざした運動ではあるが、現代はこの横社会-水平という考え方とはほど遠い、縦社会-格差(貧富)社会のまっただ中である。
“競争”と“自己責任”が闊歩し、弱い立場の者は淘汰されていく社会。毎年3万人もの人たちがみずから命を絶ち、多くの若者が働く場所から排除され、100円のコーヒー1杯で夜明けを待つ“マック(マクドナルド)難民”といわれる人たちも急増しているそうだ。就職氷河期で正社員につけず、非正規社員になった若者が次々と職を失っている。明日のみえない不安のなかで、つかの間の休息をとる。深夜のマクドナルドはそんな場所になっているらしい。
深刻な縦社会-いわゆる格差社会は貧富の差をどんどんと押し広げていっている。社会に居場所をもたない人たちがさまよっているという現実。こうした社会を横社会-水平な社会にしていくにはどうしたら良いのか。被差別部落にも同様の深刻な課題が突きつけられている。
景気の低迷、失業者数の増加と、高い失業率という現実は、デフレ経済のもとでは企業は材料費や商品価格は下げられても、日本の下方硬直的な賃金は下げにくい。そのため企業は人員削減に踏み切り、失業者を増加させる悪循環を繰り返している。そのことが個人消費を冷やして、デフレスパイラルに拍車をかけている。こうした中、課題解決に向け、提案されているのが、労働時間を短縮するなどして仕事を分かち合うワークシェアリングという考え方である。
正社員とパートの賃金・社会保障の格差是正、配偶者控除等の税制改正、副業許可、年金のポータブル化、職業紹介制度の拡充、保育所の増加など、就業多様化時代に相応しい施策を早急に整備することが重要である。これらの労働政策の大きな転換により、雇用システムの抜本的変革に踏み込み世界一の少子高齢社会に合った雇用システムをつくりあげることである。ワークシェアリングをきっかけに、日本人の働き方そのものを改めるべきである。
キーワードは、“分かち合い”“お互い様”という精神であり、凹凸やデコボコでもない。まさに“水平”な社会を築くため、ともに仕事を分かち合い、すべての人が働きがいのある社会や地域をつくりあげることが縦社会を廃し、横社会-水平な社会につながっていく考え方といえないか。ともに考える2013年としたい。(A)