部落の高齢化、若い人たちの部落離れは、いまや全国的な共通の問題として挙げ
コラム | 2024年11月16日
大阪における部落解放運動は、関係者による一連の不祥事という事件から、いわゆる“冬の時代”を迎えているという厳しい時代であるという認識に立っています。特別措置に代表された同和対策事業は、大阪各地の被差別部落の劣悪な環境を大きく改善させ、個人を対象として実施された特別措置法は、多くの被差別部落住民の生活を安定させ、自立の向上につながったことは言うまでもありません。しかし、33年間に及ぶ特別措置法時代は、行政との関係が一部であるものの互いの立場を超えた「癒着」の構造をうみだし、行き過ぎた行政依存に陥っていたことが、一連の不祥事の背景として反省されるものです。
また、2008年以降は、橋下徹・維新の会の登場により、「ムダを徹底的に排除する」といった言葉や「公をスリム化し民間にできることは徹底して民間に」という市場原理とマスコミを活用とした大衆迎合とも言えるポピリュリズムによる政治手法との闘いの時期でもあり、部落解放運動組織の大きな曲がり角とあわせて苦難の時代といえます。
国や自治体の財政的な危機という直面した課題と、市民生活における格差の広がりやそれが社会的に弱い立場にある弱者にどのような形で現れており、またそのことを改善していく方向に部落解放運動がどのような役割を果たしていくべきなのか、そのすがた・かたちを明らかにしていくことが急務な課題となっています。
そこで、大阪の部落解放運動が呼びかけているのが、法律や制度にしばられ、その枠を超えることが出来ない行政セクターと、どうしても利益優先になってしまう民間セクターという“公と民”の守備範囲を超えて求められているのが、第3セクターとも呼ばれている“社会的起業(非営利セクター)です。「営利を目的とせずビジネスの手法を用いて取り組む」というもので、労働市場から排除された人々の雇用や、社会から孤立し、行き場を失っている人々に対する社会的包摂の取り組みなどへの期待が高まってきています。
大阪における部落解放運動も公と民との間をつなぎ、人権という橋を架けるというコンセプトのもと社会的起業に取り組んでいきたいと考えています。
そのひとつが、「一般社団法人 ヒューマンワークアソシエーション(通称Bサポ)の取り組みであり、2012年6月に設立しました。このBサボは、「地域の活性化を通して、事業を興し、主に就職困難層の就労を支援することを目的とする。」との設立主旨で、おもな事業としては、1.地域活性化及び雇用創出のコンサルタント事業、2.起業・就労など仕事に関する相談事業、3.就労支援サポーター(教育・人材育成の講座開催)事業、4.ターミナル(人材バンクのネットワーク)事業、5.有料職業紹介の事業、6.人材派遣の事業、7.講演、講座、イベント企画の事業などが挙げられています。
ふたつめには、地域における部落解放運動の発展から取り組みが展開され、さまざまな地域で社会福祉法人が設立され、運営されています。その大阪府内15の社会福祉法人が集い、2012年8月に社会福祉法人の懇談会として「つばめ会」が発足、求人のネットワーク化や事業の実践交流など、15の法人の総合力を結集しようと取り組みがスタートしました。
みっつめには、「フードバンク」の取り組みです。企業と福祉団体などの橋渡しの取り組みを「フードバンク」と呼んでいます。それは、日本で年間およそ1.900万トンもの食品が廃棄されており、そのうち、まだ食べられるのに捨てられてしまうもの、いわゆる「食品ロス」は500万から900万トンもあると推定されています。食品企業では、製造工程で発生するパッケージの印刷ミスなどによる規格外品や賞味期限が一年以上もあるのに値落ちを防ぐために食べられる食品であるにも関わらず破棄することがあるそうです。企業の社会的責任CSRの観点からも、廃棄物のリユース、リサイクルは地球環境保護にもつながり、規格外品などの食品を無償でフードバンクに提供する企業も出て来ています。それら食品を児童養護施設や障害者施設、母子シェルターなど福祉団体へ無料で提供するというシステムです。
日本では2002年に誕生し、現在10カ所以上で取り組まれています。そのうち関西で活動を展開しているのは兵庫県の「フードバンク関西」のみで、貧困率が高く、さまざまな課題を抱える人たちを支援する団体やホームレス支援の団体がある大阪でも需要があるという高まりから、来年春に向けてNPO法人「ふーどばんくOSAKA(仮称)」を立ち上げることになりました。
こうした活動をNPO法人や一般社団法人などの法人格で運営しようという取り組みであり、こうした住民参加型のボランティア中心の地域活動を“市民事業”として展開しようという提案であり、それを部落解放運動から発信していこうという試みでもあります。皆様方からのご意見とご協力を呼びかけるものです。