部落の高齢化、若い人たちの部落離れは、いまや全国的な共通の問題として挙げ
コラム | 2024年11月16日
コラム | 2014年4月11日
画期的といっていい決定が出された。
1966年に静岡県の一家4人が殺害され、放火された事件で死刑が確定していた元プロボクサー袴田巌(はかまだ いわお)(78)さんに対する第2次再審請求で、静岡地裁(村山裁判長)は3月27日、再審開始を決定した。
村山裁判長は、「捜査機関が重要な証拠を捏造(ねつぞう)した疑いがあり、犯人と認めるには合理的疑いが残る」と判断。「拘置の続行は耐え難いほど正義に反する」と刑の執行停止(釈放)も同時に決めた。
再審開始や死刑の執行停止だけでなく、拘置の執行を停止し、有罪判決の決め手となった証拠が「捜査機関によってねつ造された疑いのある」ことも明記された。これによって、死刑囚が再審開始決定を受けてすぐに釈放されるという、戦後初めての急展開となった。これが、いわゆる「袴田事件」である。
再審開始決定は、確定判決が有罪の決め手とした「5点の衣類」について、あらたにおこなわれたDNA鑑定や弁護側の味噌漬け実験や開示された証拠などによって、袴田さんのものでもなく、犯行着衣でもないとしたうえで、後日ねつ造された疑いがあるとした。さらに、「5点の衣類」のズボンに一致する端布が袴田さんの家から押収されたことについても、「5点の衣類」にねつ造の疑いがある以上、同様の疑いがあり、警察が発見を装った疑いをも指摘している。
また、控訴審での着装実験で袴田さんはズボンをはくことができなかった。最初から袴田さんには小さすぎて、これを着て犯行に及ぶなどありえない話だったのだ。
そうした事実は、弁護側や裁判所にとっては、「新証拠」「新事実」となるわけであるが、警察や検察は、とっくに知っている事実だったということになる。にも関わらずである。その事実を隠し、裁判所の誤った判断を導いたということになり、隠蔽工作と言われても仕方ない事実だと言える。
今回の決定で、とくに画期的な判断は、刑の執行停止(釈放)も同時に決めたことだ。「国家機関が無実の個人を陥れ、45年以上にわたり身体を拘束し続けたことになり、刑事司法の理念からは到底耐え難いことといわなければならない」と明記し、続いて、「拘置をこれ以上継続することは、耐え難いほど正義に反する状況にあると言わざるを得ない。一刻も早く袴田の身柄を解放すべきである」と求めた。
48年という気の遠くなるような、そして日々、死刑執行におびえるという非人間性の極致が、村山裁判長をして、「拘置をこれ以上継続することは、耐え難いほど正義に反する状況にある」と言わしめたのであり、不正義に対する強い憤りがわたしたちにも伝わってくる画期的な決定である。
あらためて、代用監獄の酷さ、捜査期間が23日という長さも冤罪・権力犯罪をうむ温床になっていることが指摘されている。さらに留置所・拘置所での人権無視・非人間的扱いも、世界でも最悪の部類に入るのではないかと言われている。冤罪の多発や人権無視の捜査は、単に捜査状況を可視化すれば済むというものではなく、この国の警察・検察、さらには裁判所も含め、人権感覚が根本のところで確立されていないことが、「袴田事件」によって、あらためて明らかにされたことを物語っている。
逮捕されただけで犯罪人とされ、捜査機関の証拠捏造で死刑と宣告され、48年間もの間、絶望の淵に追い込まれれてきた袴田さん。「自由」と「安心」が一日も早く訪れることを願ってやまない。
「検察の理念」という倫理規定が策定されている。その倫理規定には、「権限行使の在り方が、独善に陥ることなく、真に国民の利益にかなうものとなっているかを常に内省しつつ行動する、謙虚な姿勢を保つべきである」と記されている。
さらには、「無実の者を罰することのないよう真相解明に取り組む」「被告人等の主張に耳を傾け、積極・消極を問わず証拠を収集し、冷静に評価する」との記述もある。あらためて理念の精神に立ち戻ることを訴えておきたい。