部落の高齢化、若い人たちの部落離れは、いまや全国的な共通の問題として挙げ
コラム | 2024年11月16日
コラム | 2014年10月29日
国の調査によると、「夫婦と子どもからなる世帯」の割合が27.9%に対して、「ひとり暮らし世帯」の割合が32.4%と、はじめて「ひとり暮らし世帯」が、いわゆる“標準世帯”を上回るという結果が報告された。
これを、「跡継ぎ不在」社会、「おひとり様」社会と呼ぶそうだ。
現在の高齢化率は、25.1%だそうで、2025年には、それが30%を超えると予想されており、さらには、2060年には、推定40%に達するといわれている。
また、65歳以上の高齢者が、子どもと同居している割合についても、1980年にはほぼ7割であったのに対し、2012年のデータでは、42.3%となっているとのこと。
とくに、これからは結婚しない男女が増え続けるともいわれており、2030年には、男性30%、女性23%が非婚。いわゆる結婚しないままの人生を送るケースが増え続けると予測されている。
わたしたちの発想もこうした時代の変化に対応して、転換していくことが求められることは言うまでもない。
団体や組織は、夫婦と子どもの、“いわゆる標準家庭”をひとつの基本として、つくりあげられてきており、ひとり暮らしや結婚しないシングルのままで、社会生活を営んでいくというライフスタイルを基盤とした組織運営にはなっていないからである。現在の団体・組織の運営とは相当のギャップがあることを自覚しなければならないと思う。
「家族」や「家」を基本とした組織運営から、個人個人を意識した「個」を中心とした運営形態に団体や組織が、切り替えていかなければ時代にマッチしなくなり、組織そのもののありようが問われるということになってくることは明白である。
例えば1965年の「同対審」答申以降の部落解放運動は、いわゆる“標準世帯”をターゲットにした運動形態であったと言えるだろう。
まずは、居住環境である。夫婦と子ども二人ぐらいを標準にして、公営住宅が建設され、公営・改良住宅という居住環境を実現し、劣悪な環境の改善に努めた。つまり、これも標準世帯を対象とした住環境整備といえる。
さらには、保育所の建設、小中学校の就学援助費の対策や高校・大学への奨学資金などは、標準世帯の子どもを対象に実施してきた対策である。
また、医療費減免の同和対策や現業を中心とする公務員への採用の実現などは、標準世帯をターゲットにした、生活改善事業であり、自立促進のための諸制度であった。どれもこれもが、4人家族ないしは、5人家族というひとつの家族をモデルとし、さまざまな対策が功を奏したと総括できるだろう。
しかし、これからの被差別部落においては、「ひとり暮らし高齢者世帯」や「結婚しない単身者」世帯が急増していくことは、上記の数値から見ても明らかである。増えるべき世帯構造にあわせた運動の構築が必要となっており、時代に取り残されないためにも、この層を中心とした運動に枠組みそのものを変化させなければならないことは明々白々だ。
急増しようとしている、ひきこもっているひとり暮らしの若者をどのように社会に、地域に参加させることができるのか。地域に暮らしているという自覚や、誰かのために役に立っているという生き甲斐ややりがい、「結婚しない単身者」にどのようなインセンティブ(人の意欲を引き出すために、外部から与える刺激)をあたえることが出来るのか。勝負である。
「ひとり暮らし高齢者世帯」、とくに男性の場合、他人との接触を極端に嫌い、家から出ることなく、“老い”ていくということも多い。こうした事態に地域や解放運動は、どんな手だてを打つのか。これも勝負である。老いは、いつかは、認知症を発症させ、「知的機能が持続的に低下していく」という現実に直面していくこととなる。認知症1000万人時代の到来であり、避けて通れない現実である。
「個」を基本においた部落解放運動-どんな組織へと転換させるのか、時間は待ったなしで迫ってきている。