部落の高齢化、若い人たちの部落離れは、いまや全国的な共通の問題として挙げ
コラム | 2024年11月16日
コラム | 2015年5月18日
「最終に来て、形勢逆転、維新の勢い増す」「高い投票率により、『賛成』が多数を獲得する模様」…5月17日の大阪市民による住民投票は、「反対」「賛成」が拮抗し、最後までデットヒートが繰り広げられた。結果は、賛成が過半数を上回るとの予想を覆し、“反対”の多数となった。府連市内ブロック各支部の奮闘もさることながら、府内の全支部、部落解放運動関係者にもさまざまな取り組みに協力をいただき、勝利することとなった。ご尽力いただいたことに感謝申し上げたい。
大阪市を廃止し、5つの特別区を設置するという住民投票については、“問題あり”とたびたび水平時評においても指摘してきたが、投票前に西成区で、以下のようなビラが配布された。
—————————————-
「都構想で住所から『西成区』をなくせます」
「西成」のマイナスイメージを消して、住みよい便利な街として人を呼び込む
→お店・学校・町会が元気になります
若い人が出ていってしまう西成区
→毎年人口が減っている あと20年したらこどものいない過疎地(?)に
—————————————-
問題のビラの発行元は、「大阪維新の会」となっており、「西成」という地名をなくすためにも住民投票には、「賛成」をと呼びかけられているものである。
「西成」という地名に対するマイナスイメージは、“西成差別”と称されるほど、歴史的にもさまざまな人権侵害事件が引き起こされてきた。
1996年には、少女漫画の別冊フレンドの連載漫画「勉強しまっせ・STUDYS」の中に「兄貴おるけど、高校中退して家出してからずっと西成住んでるし」というセリフがあり、その西成の注釈に編集者が「大阪の地名。気の弱い人は近づかない方が無難なトコロ」と記述して問題になったという事件である。
ホームレスの街「西成」、治安の悪い街「西成」といったマイナスイメージは、96年以降払拭されたのかと言えば、そうではない。維新のビラが指摘しているように、“西成”の地名をなくせば、イメージが変わるという短絡的な問題ではない。西成のイメージが悪いことが、若い人を追いやっているということでもない。橋下市長が指摘した「西成をエコひいきする」とした考え方で、差別を乗り越えるような行政施策と地域住民による西成のイメージアップのための活動との車の両輪のような取り組みが急務であろう。
別冊フレンドに対しては、西成の中学生が怒った。西成への偏見という問題に子どもたちが立ち上がって、問題を指摘したのである。西成という地名をなくすことが問題の解決につながるといった差別的、短絡的な視点のではなく、差別を敏感に見抜いた中学生の視点こそが「西成差別」を乗り越えていく手立てだと思う。
問題のビラは最後に「これまでの政治家は誰もこの町を変えてくれませんでした。」と書かれている。さらに、「特別区になると、予算を決めることのできる区長が生まれるので、この町の希望がかなう」で結ばれている。
地域住民の感心や住民の自主的な行動など、自発的な「西成差別」撤廃の市民運動があってこそ、若者が定着し、西成のイメージを変え、人口減少にストップをかけることが出来るのではないだろうか。住民の営みを呼び起こすような政治家の役割をいっさい示すことなく、統治機構だけを変えたところで、長い時間をかけてすり込まれてきた西成への「排除」の考え方を葬り去ることなどできるはずがない。
「西成」をなくすことではなく、こんなビラを平気でまく「維新の会」こそがなくなるべきではないだろうか。