部落の高齢化、若い人たちの部落離れは、いまや全国的な共通の問題として挙げ
コラム | 2024年11月16日
コラム | 2016年4月27日
いまさら皆さんに紹介するのも気が引けるが、4月のはじめに来日していた「世界で最も貧しい大統領」と言われたホセ・ヒムカ・前ウルグアイ大統領による2012年のブラジルで開催された「国連持続可能な開発会議」での演説はあまりにも有名だ。
この演説は日本でも書籍や絵本として出版され、とくに絵本は16万部も売れるロングセラーとなったことをご存じの方も多いだろう。
そのホセ・ヒムカ氏が、東京都内で一部メディアの取材に応じ、日本政府が憲法解釈を変更、他国を武力で守ることを可能にした安全保障関連法を制定したことについて「憲法の解釈を変えたのは、日本が先走って大きな過ちを犯していると思う」と批判している。
また、続いてムヒカ氏は、「いまだに人類は先史時代を生きている。戦争を放棄する時が来たら、初めてそこから脱却できる」と指摘。「私たちには戦争を終わらせる義務がある。それは世界の若者が完成させなければならない大義であり、可能なことだ」と訴えている。
来日に際し、被爆地・広島を訪れることを自ら決めたというムヒカ氏は「広島には世界で起きた最も大きな悲劇の記録がある。人類がいかに残虐なことをできるのかが見えてくると思う。日本に来て広島を訪れないのは日本国民の皆さんに対して敬意に欠けるのではないか」とも述べている。
ムヒカ氏を有名にした名演説の要旨はこうだ。
「貧乏とは少ししか持っていないことではなく、無限に多くを必要とし、もっともっとと欲しがることです」「今の地球の危機の原因は、環境の危機ではなく、政治の危機なのです」「乗り越えなければならないのは私たちの文明のモデルであり、見直すべきは私たちの生き方なのです」
ムヒカ氏は居並ぶ各国首脳を前に、大量消費社会やグローバリズムを批判し、世界の注目を集めた。
「質素な生活は自分のやりたいことをする時間が増える。それが自由だ」との持論を展開。公邸には住まず、報酬の9割を慈善団体に寄付。現在も自宅で畑を耕しながら上院議員の妻と二人で暮らしているそうだ。
戦争やテロ、貧困や格差、気候変動や環境汚染など世界が抱えるさまざまな問題に関して、説くように持論を語ったムヒカ氏。「もはや一国で解決できる問題ではないが、世界全体での合意は存在しない。世界的な政治的決断が求められているにもかかわらず、私たちはそれをくだせずにいる」。何かを追い求め続けることに束縛され、本当の幸せとは何かを見失ってはいないか、とムヒカ氏は問いかけている。「世界は多くの富を抱え、技術も進歩した。しかし、ほんとうに幸せに生きているのだろうか」と・・・。
わたしたちの取り組む部落解放運動は、格差社会反対である。貧困社会は葬り去りたいと思っている。しかし、そのめざすべき社会は、大量消費社会で、贅沢の極みをみんなで分かち合うという社会ではないはずだ。決してそんなことではなく、質素で、必要最低限のものを持てさえすれば、それはそれで幸せな生活を送れることが出来るような社会の実現は可能だと思う。
水平・フラットな社会の実現のためには、シーソーを平行にするように一部の圧倒的な富が集中する人たちが、富を一方にシフトさせるだけで、フラットな社会が実現するのではないだろうか。従来の部落解放運動は、貧困という生活のレベルアップのみに主眼が置かれてきたが、富の分配のシステムを組み替えるという新たな発想の転換が、私たちに求められているように思う。つまり、富や栄誉を持つために部落解放運動や市民運動に取り組んでいるのではなく、幸福を実感するために取り組んでいることを忘れてはならない。
社会の発展は、幸福を阻害するものであってはならず、人類に幸福をもたらすものでなくてはならないはずであり、それが部落解放運動や市民運動のポリシーのはずだ。
地域をひとつのフィールドとみなし、その全体のパイを活用することを通じてフラットな社会の実現をめざす。それを一地区だけで貫徹できないなら北摂や河内、泉州といった枠内で、それも無理ならオール大阪の各被差別部落でつながるフィールドでシーソーゲームに明け暮れてみたいものである。ギッタンバッコンしながらフラットな水平社会を創造したいものだ。