Vol.88 「アベ化」する社会に歯止めを おだち勝利で改憲を阻止

 

以下に列挙する政策をご覧あれ。

・政府による徴税は窃盗であり財産所有権の侵害であるとして一切認めない。
・軍隊への徴兵も認めない。税金で賄われる補助金や助成金の類も一切認めない。
・あらゆる銃火器や弾薬の製造、販売、所有の規制も認めない。
・麻薬の生産、販売、所持、使用、最低年齢規制を含む一切のアルコールやタバコの摂取や販売、 賭博、ポルノグラフィ、同性愛、児童性愛、近親相姦、猥褻な行為、淫らな言動、差別的言動、下品な行為、一夫多妻、乱交、自殺等の規制は一切認めない。

こうした政策を掲げる政党が、アメリカの政党リバタリアン党である。この政策に対する支持が拡大してきており、11月のアメリカ大統領選挙における台風の目となる可能性が連日報道されてきている。

共和党トランプ候補をしのぐ最右派となる考え方で、自己決定権を尊重する気風の強いアメリカにおいて一定の支持を得ている。「ここまで右よりの考え方は厳しいので、トランプあたりがちょうど良いかも」とリバタリアン党の出現がかえってトランプの支持を上昇させる役割を果たすのではないかともいわれている。

こうした全世界的な影響を法政大学教授の山口二郎氏は、「いま世界にアベ的権力者という妖怪が増殖している。世界はアベ化してきている」と分析している。その理由の第1としては、自己愛がきわめて強く、自分を正しい、美しいと思い込んでいることであり、第2には、自己愛の裏返しで、自分に対する批判や責任追及に対しては一切耳を閉ざし、欠点を是正するという意欲を持たないこと。第3には、自己愛の過剰さゆえに、自分を攻撃するものに対して過度に攻撃的になること。第4には、自分が敵とみなす者を攻撃する際には、嘘、捏造も平気で行い、虚偽の主張が明らかになっても恥じることがないのだと分析している。

こうした総アベ化の傾向が強まる中で、7月10日参議院選挙の投票日を迎える。選挙情勢は、自民が全国的にも安定的な闘いをしているらしく、32の定数1の選挙区でも当初は、野党共闘の候補者が善戦していたが、ここに来て自民党候補の巻き返しが起こってきており、野党にとっては厳しい選挙情勢だとマスコミ各社が伝えている。安倍首相をはじめ、自民党の執行部は今回の選挙争点にまったくと言っていいほど憲法問題を持ち出すことはなく、「景気回復のためには自公による安定政権の継続を」と嘯(うそぶ)いている。

しかし、終盤を迎えた選挙情勢を各社の報道は、「改憲勢力4党で3分の2をうかがう」というものだ。 何人かの記者に聞くと「選挙戦に入る直前から自民党の勢いが増していて、32の1人区でも競り合ってはいるが自民がやや優勢というところが増えており、4人区の大阪においても最後の議席を争っているのが民進と共産、維新のもうひとりというケースであり、それが全国的にも、自民に追い風となっており、改憲4派で3分の2も夢ではない」のだそうだ。

こういう予測報道には「アナウンス効果」が生まれる可能性を持っており、それを見た人々の意識が流動し、意識するしないに関わらず、それが投票行動に変化を生じさせることが起きる可能性が示唆されている。ここ大阪においてもおだち源幸・民進党候補も非常に厳しい選挙戦を闘い抜いている。ここへ来て、イギリスのEU離脱ショックで世界経済が大変動しており、 予想を超えた株安・円高が続いている。「アベノミクスは成功しつつある」という自民党の訴えは、説得力を失っていることはいうまでもない。経済を前面に出して改憲に必要な3分の2議席をかすめとろうという自民党安倍政権の作戦に暗雲がさしているのは確かである。なんとか残りの期間、おだち源幸候補の勝利に向けた奮闘を訴える。