部落の高齢化、若い人たちの部落離れは、いまや全国的な共通の問題として挙げ
コラム | 2024年11月16日
コラム | 2016年12月15日
大阪府警の機動隊員が、米軍ヘリパッド建設反対派に対して「土人」とする差別発言の暴言を吐いたことは記憶に新しいだろう。背景にあるのは、沖縄に対する露骨な差別意識の反映であり、続けて発せられた「シナ人」との暴言も含め、根強い差別意識から来るものであることが理解できる。
また、一方で機動隊を擁護する発言も少なからず出てきているのもご存じだろう。その典型的な擁護発言が、大阪府の松井知事の発言である。発言は以下のような内容だ。「ネットでの映像を見ましたが、表現が不適切だとしても大阪府警の警官が一生懸命命令に従い職務を遂行していたのがわかりました。出張ご苦労様」という内容を自身のツイッターに書き込んだようだ。翌日の囲み取材でも「売り言葉に買い言葉」などと改めて機動隊員擁護の姿勢を示している。
10月22日門真市駅の男子トイレで以下のような落書きが発見されている。「Osaka Pref 公認 New Word 土人 エタ ヒニン 朝賤人 シナ人」と書かれており、その横に「ポア」と記されていた。Prefは、都道府県の意味を指していると考えれば、以下のように訳することとなる。「土人」という言葉は、大阪府公認の言葉であり、「エタ ヒニン 朝賤人 シナ人」も同類として“ポア”(オウム真理教内にて「殺人」を意味する言葉)すべき存在であると読み解くことができる。つまり、松井知事のツイッターへの書込が、門真市駅への差別扇動を誘発したと言われても仕方がないことは一目瞭然と言えるだろう。
時あたかも12月9日参議院本会議において「部落差別解消推進法」が可決、成立した。部落差別の存在を国が認め、差別の解消を推進しなければならないと明記された法律であり、部落差別は社会悪であると規定されたことは特筆すべきことである。しかし、「土人」「シナ人」と同様に殺害の対象に“エタ ヒニン”も列挙し、差別の対象として存在している現実は、法律の有無に関係なく、差別ヘイトの“数珠繋ぎ的”被害として広がってきている。差別の対象であり、殺害をほのめかす対象に「土人」も含め「エタ ヒニン 朝賤人 シナ人」がその被害対象にさらされなければならないのか、松井知事のツイッターの書込が契機になって誘発させたとはいえ、差別ヘイトの思想が拡大され、陰湿さを増し、露骨な差別としてわたしたちの前に立ちはだかって来ているのだ。
自民党によって次から次へと繰り出される矢継ぎ早な人権に関する施策は、障害者差別解消法の制定と障害者権利条約の批准からはじまり、婚外子差別に関わる民法規定違憲判決と民法改正と続き、今年に入ってからも、ヘイトスピーチ解消法案の制定がされ、また、LGBT対策法案が検討されていたり、アイヌ民族に対する新たな法案の検討も進められている紹介されている。部落差別解消推進法も含めこれら一連の人権に関する法律は、いずれも不当な差別を社会悪と規定し、差別解消のための諸施策の推進という個別理念法に留まっているのが現状である。
しかし、差別や人権侵害は、ここのマイノリティへの差別という枠を超え、それこそ差別の“オンパレード”とも言うべき事態を引き起こしている。個別の人権に関する各々の法律は、マイノリティ勢力への切り崩しともとれる権力側の思惑があることを見抜いておく必要があり、と同時に分断につながっていくようなマイノリティ間の乖離政策であることを押さえておくことも重要である。こうしたことを見抜いた上で、マイノリティ全般の問題として横串を通すような人権侵害による被害者の救済と人権侵害をおこした加害者に対する差別規制や禁止の法律がますます急務になってきている点を強調したい。法律は個別で、しかし、差別は個々のマイノリティを呑み込むように数珠繋ぎでやってくるという現実を直視しようではないか。