部落の高齢化、若い人たちの部落離れは、いまや全国的な共通の問題として挙げ
コラム | 2024年11月16日
コラム | 2017年4月27日
東日本大震災の被害について「まだ東北で良かった」と発言した今村雅弘復興相が辞任した。民進党の安住淳代表代行は記者会見で「東北を差別する許し難い発言。首相は『被災地に寄り添う』と言うが、復興相人事を見る限り寄り添っていない。国会で任命理由を説明し、謝罪すべきだ」と強調したと報道されている。まあ当然といえば当然であり、こうした東北に対する差別意識を露わにしたような問題発言をする復興大臣は、即刻辞任すべきであり、国会議員としての資質さえ問われる問題であることは言うまでもない。
この発言がきっかけとなって少し話題に上っているのが、ツイッターなどのSNSで、「#東北でよかった」のハッシュタグ付きのつぶやきが続々と投稿されているらしい。話題は、この「#」-ハッシュタグだ。
この「ハッシュタグ」とは、Twitterを中心としたSNSで、投稿内のタグとして使われるハッシュマーク「#(半角のシャープ)」がついたキーワードのことを指すらしい。
では、なぜ、このハッシュタグマークをつけるのかをひもといてみると、3つのキーワードが紹介されていた。そのひとつは、「同じことに興味を持った人たちと、共通の話題で盛り上がれる」という印だそうであり、ふたつめは、「他のユーザーがハッシュタグで検索することで、自分の投稿を見てもらえる」というメリットがあるそうで、みっつめには、「人気のハッシュタグから旬の話題がわかる」というのが説明されている。
辞任した今村氏の問題発言があった夜以降、ツイッターには「#東北でよかった」とのつぶやきがあちらこちらで、広まってきており、テレビや新聞でもとりあげられている。
「私の住む町はこんなに素敵(すてき)」「故郷を離れても忘れない。あの町で育ってよかった」「福島のばあちゃんが作った梅酒はどこの梅酒より美味(おい)しい」。こうしたメッセージとともに、東北各地の桜の名所や田園風景、仙台の七夕まつりや青森のねぶた祭りの様子、盛岡冷麺やラーメン、馬刺しといった郷土の料理の写真が数多く投稿されている。国の天然記念物で、日本三大桜の一つ、福島県三春町の滝桜の写真を投稿し、そのコメントとして、「引っ越してきたのが#東北でよかった」とつぶやいている。
問題発言を逆手にとったハッシュタグ。ツイッターでは「すてきな使い方になっていて涙が出た」などと共感が広がっていると朝日新聞で紹介されている。
この逆手にとったユニークな発想をわたしたちの活動にもとりいれることは出来ないだろうかと考えてみた。行政に対して、社会に対して、差別を受ける側として、抗議の意志や異議申し立てという従来の主張だけの運動の領域ではなく、「#」-ハッシュタグ的運動の展開という新たな発想を部落解放運動に試みてはどうかと思考したい。
「#部落でよかった」「#この地域で生まれてよかった」「#この地域で住んでよかった」といった「#」-ハッシュタグでつながるようなネットワーク型の運動にこれからの若いひとたちの活動領域が見え隠れしているように思うのはわたしだけだろうか。
居場所は、被差別部落で、出番は、「#」-ハッシュタグ。つまり、「共通の立場(部落解放運動や社会活動への参加)に立った人たちと、共通の場面(活動・居場所)で盛り上がる」といった部落解放運動の仕掛けが必要なときだ。
「子育て、教育」「仕事・働き方」「暮らし」などをキーワードに、約束事は、「ひとにやさしいまちづくり」を合言葉に、発掘・発信・創造というコンセプトで、テーマ毎のイベントやフォーラムといったことを仕掛けてとりくんでいく。先進的な自己表現の方法と社会を変革していこうというふたつの要素を組み合わせたハイブリッドな社会運動を創造したいと思っている。
腹立たしい差別に対しての怒りや抗議の意志、糾弾という方法でもって社会に異議申し立てを展開してきた部落解放運動。一見強面(こわおもて)な運動が社会変革へのエネルギーを形成し、部落解放運動の高揚期を牽引してきたことは事実であり、これからも社会悪である部落差別に対しては、毅然とした態度で、抗議の意志を組織として訴えるというスタイルは重要な運動だ。
しかし、もう一方の運動のスタイルとして、むしろ発想を転換させて、「#」-部落発というおもしろさの発信というか、“部落ならでは”の良いところを伝え、輪を広げ、発信していくという“部落ならではの祭りごと”への仕掛けが魅力ある部落解放運動であり、それこそ“部落解放運動には夢がある”のではないだろうか。