Vol.126 「遊び心」で踏みにじられる人権 沖縄反戦ツアーで感じたこと

「それで何人死んだんだ」
衆議院本会議が1月25日に開会され沖縄でのあいつぐ米軍機事故について野党が追及しているときの自民党内閣副大臣(当時)のヤジである。
在日米軍基地が沖縄に集中しているという現実のなかで、米軍ヘリコプターからの部品落下事件や不時着事故などが相次いで引き起こされている。まさに日本でもっとも危険な地域であり、日本政府が進める対米政策の結果、沖縄県民にのみ傷みと犠牲を強いるきわめて差別的な政策であることは周知の事実である。
それが、事もあろうに「死人がでなかったから問題なし」ともとれる、まったく許せない言語道断の暴言であり、副大臣の辞任はもとより、議員辞職さえ検討すべき発言であろう。

この沖縄の地で1月26日〜28日にかけて2018沖縄反戦ツアーがとりくまれた。府連国際運動部の主催で総勢23名が参加、浅香・加島・矢田の3支部で構成している3地区まちづくり合同会社AKYインクルーシブコミュニティ研究所が全体の運営を企画、実施してくれた。
沖縄は、第二次世界大戦で日本の中において、唯一地上戦が繰り広げられた所であり、多くの女性や子どもといった住民が犠牲になった地域である。
その象徴ともいえる場所が、読谷村にある鍾乳洞(ガマ)、チビチリガマだ。1945年沖縄戦で集団自決が行われた場所である。「ガマから出ていけばアメリカ兵に殺される」という日本兵の言葉を信じ、ガマを出る者はいなかったと言われている。
チビチリガマへは140名あまりが避難しており、米兵の投降の呼びかけに応じることなく自決を選ぶ者が多数あらわれ、亡くなった人85人のうち12歳以下の子どもが47人、母親が子どもを殺してしまうという惨劇も繰り返された。現地の人たちは、「集団自決と言われるが、この行為は強制集団死である」と強く訴えている。

このチビチリガマが、昨年の9月に何者かによって荒らされているという事件が起きた。チビチリガマの入り口の看板が引き抜かれ、「世代を結ぶ平和の像」の石垣が破壊され、内部の瓶やつぼなどが割られて散乱し、平和学習で訪れた中高校生による千羽鶴が引きちぎられて放り出され、遺骨が集められている部分も荒らされた。
事件が起きた一週間後に少年4人による犯行であることが判明した。16歳、17歳、18歳、19歳の少年たちであり、動機は単純な肝試しだそうである。現地では、事件の背景に政治的な思惑や思想的に影響を受けた少年たちによる犯行ではないかとの推測が流れたが、まったくの興味本位による愉快犯的な犯行だとわかり、現場では関係者一同、胸を撫で下ろしたと言われている。

チビチリガマが見学できないほどの非道な荒らされ方をされ、その行為そのものに政治的意図はなかったと一応の安堵感を覚えたわけではあるが、わたしは、逆に政治的な背景や意図したものがなく、興味本位でガマの中に入り、日頃の鬱憤をはらすかのように壊し続ける少年たちの姿に、怖さを感じてならないのである。つまり、ちょっとしたきっかけさえあれば、平和は脅かされ、人権は侵害され、差別が大手を振って闊歩するという時代に簡単になってしまうという危険性を感じるのは、わたしだけだろうか。
少年たちがチビチリガマを荒らしたように、ほんの興味本位に肝試しのつもりで、平和と人権が、意図も簡単に踏みにじられようとしている現実に対して、恐怖さえ感じてしまうことを考えすぎであって欲しいとさえ思う。
デマやフェイクニュースが飛び交う現代社会だ。事実ではない、虚偽・デタラメな内容の情報が世に溢れかえっている。そして、そういうデマ情報を発信している者は、悪びれる素振りもなく、ジョークであり、冗談の範ちゅうであり、ちょっとした遊び心だと説明する。
こんな真偽不明な虚偽な情報によって、わたしたちの世が、平和から戦争へ、人権から差別へ、と流されることに、明確に異議申し立てを続けなければならないと、あらためて確認した2018沖縄反戦ツアーである。参加者のみなさんごくろうさまでした。
そして、金城さん、知花さん、くれぐれも飲み過ぎには気をつけて!