Vol.144 急増する子ども食堂 まずはおなかいっぱいに 

大阪府内で実施されている“子ども食堂”の勢いが凄い!ふーどばんくOSAKAにも「子ども食堂をはじめたいので支援してほしい」「どんな、食料を提供してもらえるんですか?」といった問い合わせが後を絶たない。11月現在で、大阪府内111ヵ所の子ども食堂と契約している。

多くの子ども食堂の中でも“朝食”を提供するというユニークな試みも登場してきている。
大阪市東淀川区では市立西淡路小学校の家庭科室を借りて、毎週月曜日、水曜日、金曜日の週三回の朝、「朝ごはんやさん」を“開店”させている。

1日の始まりに朝食をしっかりとって生活リズムを整えてもらおうと、小・中学校で子どもたちに朝ごはんを提供する活動だ。登校してから食べるため、利用しやすく、遅刻が減るなどの効果もあるという。

文部科学省の全国学力・学習状況調査(2018年度)では、朝食を毎日食べると答えた小学6年生は84・8%、中学3年生は79・7%で13年度と比べて、小6で3・8ポイント、中学生で4・6ポイント下がるなど、低下傾向が続いているとのことであり、一方で、朝食をとる子どもは平均正答率が朝食をとっていない子どもより高いとするデーターが紹介されており、大切さが再認識されている。

朝ご飯を食べさせるのは、当然親の責任であり、用意をしない親が悪いとかたづけてしまうことは簡単なことだ。ここにも“自己責任論”の登場だ。

フードバンク山梨が興味深いデーターを紹介している。16年〜17年に山梨県内の学校の教員や保育士、支援世帯を対象に子どもの貧困の実態調査を実施。その結果、「貧困状態の子どもを発見した時、学校として十分な対応ができていると感じるか」という設問に対し、▽できている7%▽ややできている18%▽分からない51%▽あまりできていない20%▽できていない5%―と、7割以上の教員が子どもの貧困に適切に対応できない恐れのあるとの数字が紹介されている。保育士に対しても同様の傾向が見られるとのことだ。

対応が十分にできていない理由として「プライベートに関わることなので、どこまで踏み込んでよいのか分からない」(教員)「家庭から学校に話をしてくれれば対策も考えられるが、こちらから言いにくい」(同)「昼食をよく食べる子、体臭がある子は貧困世帯と判断すべきか分からず、保護者になかなか話ができずにいた」(保育士)などが挙がった。

貧困状態の子どもを見つけたときに「十分な対応を取れるか分からない」と答えた教員が半数を超える。どの範囲を持って貧困状態にあると判断するのかはきわめて難しい問題である。そして、その原因や背景に親の怠慢や虐待、ネグレストなどの課題が横たわっていることも想像に難くない。

そこに親の無責任な対応や育児放棄が存在していることも事実であろう。だからといって子どもの貧困を放置することは許されない。

「朝ごはんやさん」を運営するメンバーのひとりは、早朝から働きに行く親が「作り置きよりは温かいものを」と利用させるというケースでも大いに結構と笑い飛ばす。「友達とおなかいっぱい食べて元気に1日を過ごしてくれたらそれで満足」「おなかと心が満たされて子どもの表情が明るくなることが何より」と語る。食べに来る子ども達の状態が問題ではなく、すべての子どもに朝食をというスローガンのようだ。

ルールや責任よりも“お腹を空かしている子どもに食事を”“まずは、お腹をいっぱいに”と悪戦苦闘している現場こそ元気だ。課題を抱えている子どもを発見するというよりは、すべての子どもに朝ごはんをと“来る者拒まず”の精神だ。

今年の流行語大賞にノミネートされているNHKの番組に登場する「チコちゃん」の決めぜりふ「ボーっと生きてんじゃねえよ!」と言われているようである(笑)。