部落の高齢化、若い人たちの部落離れは、いまや全国的な共通の問題として挙げ
コラム | 2024年11月16日
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大阪市の廃止か、存続かを問う11月1日の住民投票まであとわずかとなった。可決されれば(賛成が上回れば)、政令市の大阪市が制度創設以来はじめて廃止されることになる。都道府県との二重行政がつねに課題に挙がる政令市のあり方、住民投票の結果は大都市制度の見直し論に大きな影響を与える全国的に注目されることとなる。
大阪市民なら新聞折り込みや郵便受けに毎日のように、「賛成」「反対」のどちらかのビラが舞い込んでいる。賛成派は「広域行政を府に一元化させ、府・市で似た仕事をする二重行政を解消させることを通じて、住民サービスが向上し、大阪が成長する」とメリットを強調している。
一方反対派は、「大阪市が廃止されて権限と財源を失い、4つの特別区の区長が府にお伺いを立てて予算確保に努めなければならず、間違いなく住民サービスは低下する」とデメリットを強調するという賛否両論真っ二つの状況だ。
ある意味賛成派と反対派の主張が分かれるのは当然であり、まったく相容れないポイントは3つある。
ひとつは、大阪市を廃止して4つの特別区への移行の際に生じるコストの問題であり、ふたつめは、大阪市という政令市を廃止してまで府に権限と財源を委譲して、4つの特別区に財政効果は果たしてどれほどのものなのかという点であり、みっつめは、それにともなう特別区で実施される市民への行政サービスが向上するのか、低下してしまうのかという論点である。
特別区の設置ための初期費用コストを松井大阪市長は、住民投票の説明会で、「約240億円の予算が発生するが、それは“先行投資”だ」と主張。特別区が設置されれば、行政運営の効率化を通じて、10年間で最大1兆1千億円の歳出削減効果が期待できると試算を公表している。しかし、その報告書は繰り返し訂正されるなど、試算の妥当性については疑問視されており、裏付けとしては非常に弱いと指摘されている。
また、財政面では、固定資産税や法人住民税などが府が一括して徴収するという仕組みになっており、配分比率としては、大阪府が全体の2割を確保し、残り8割を4区に割り当て配分するという計算となっている。しかし、問題となるのは、大阪府から特別区へ配分される予定の「財政調整交付金」が十分な金額であるのかどうかというのが問題であり、大阪府財政がひっ迫してくれば、当然、特別区へ配分する財政調整交付金を減額していくという事態が起こりうるのが必然だと言うことだ。そうすると特別区の行政サービスの中心である福祉や教育などへ直接影響を及ぼすという事態が想定されることは至極当然のことと言える。
しかも府の全体に占める4つの特別区人口は、府全体の3割でしかなく、残り7割は特別区外の人口比率であり、東京都23区が占める都全体の7割とはほど遠い格差があり、特別区から吸い上げられる税金が、大阪府全体で広く薄く活用されることは火を見るより明らかであるといわざるを得ないと言うことになる。
また、4つの特別区それぞれの予算配分も違ってくることは明らかであり、豊かな特別区もあれば、財源がかなり不足してくる貧しい特別区も出てくることは容易に理解できるもので、そう考えれば、選挙によって選ばれる区長が、“特別区ファースト”を公約に掲げて当選すれば、当然他の特別区を助けたり、保護したりすることはなく、住民格差が著しく生じることとなる。
財政調整交付金はこのような特別区間の財源の不均衡をなくすという目的があり、大阪府が権限をもってその不均衡を是正するための努力をすることになるが、財政調整は自分たちとは関係のない住民のために税金等を分担するということに反対する特別区長が誕生しないとも限らないだろう。
こうした不透明な部分を残したままわたしたちは、11月1日の住民投票を迎えることとなる。
つまり、わたしたちには未来の選択としては未知の領域であり、特別区の財政効果は不透明、住民サービスは向上するか低下するかも定かでないという事だけは明らかなようだ。だとすると答えはひとつだ。こんな将来が見通せない住民投票には「反対」し、大阪市をまずは廃止させてはならず、4つの特別区への移行を阻止することである。
反対・賛成で住民が対立や分断しているという現実にピリオドを討ち、そこから大都市制度のあり方の議論をはじめても良いはずだ。まずは冷静な判断として、「反対」を投じよう。