Vol.236 ネットを利用するだけで個人情報が収集される時代

人気のあるホームページや検索サイトを覗けば必ずバナー広告が登場している。
しかし、不思議なのは、クルマの情報や人気のあるスポーツ競技のページなどを閲覧し、少し時間がたって、Yahoo!などの検索サイトのトップ画面を開くと必ず自分が閲覧していたクルマ情報やスポーツに関するバナー広告が結構な範囲で宣伝としてバーンと自分の目に飛び込んでくるという経験をほとんどの人は体験したことがあるだろう。

テレビやラジオの広告とネット広告が決定的に違うのは、その個人の嗜好によって違うバナー広告が設定できるというネットならではの特異性である。テレビやラジオは、関西圏や関東圏というように地域によって、違うコマーシャルが流れることがあるが、ほぼ住んでいる地域を限定すれば、同じチャンネルを視聴している場合、流れるCMに変わりはなく多くのひとたちは同じCMを何度も繰り返して視聴している。

しかし、インターネットの場合は、検索サイトで自分が情報として知り得たいページをネット検索し、動画や論文などから自分が納得する情報を得るという方法で、ネットを活用しているひとが多いと思う。そうするとこのAという個人は、クルマ好きで、しかも相当なマニアで細かい部品にまで着目しているという個人の趣味嗜好がコンピューターにA氏の個人情報として蓄積されていくこととなり、A氏の興味を引くような広告が検索サイトにバナーとして紹介され、そこをクリックするとクルマ部品の細かいパーツを販売するページにジャンプするというサービス満点のネット広告である。

つまり、ターゲットがはっきりしていて不特定多数に予算をかけて宣伝するより、興味を持っているユーザーをネット上から絞り込み、そこに有効な宣伝のページが提供できれば、まさに“いいね!”である。

しかもその利用者であるユーザーの趣味・関心という分野にとどまらず、ユーザーの属性や年齢・性別までもがほぼわかるというのである。なんでパソコンや携帯をいじっているそのひとの属性や年齢・性別までもが巨大プロバイダーにわかってしまうのか・・・理解に苦しむと知り合いのネット業者に訪ねた。

答えは、簡単で20歳〜24歳、25歳〜29歳、30歳〜といった年齢分布は、そのひとが検索している趣味嗜好がAIで分析され、年齢構成が判断されているというのである。つまり、間違いなくその年齢という答えではなく、ほぼその年齢層が閲覧しているだろうという根拠に過ぎないというのである。性別も同様、女性が好むようなページを多く検索しているひとと、クルマやゴルフ関係のページを見ているひととで、男女を判断しているというのである。また趣味・関心は、カテゴリ毎に分類され、政治に興味のあるひと。恋愛に関心のあるひと。占いに興味を示しているひとなどの属性が、言葉は悪いが、“アウティング”されているというのである。

当然、リベラルな左翼チックなページばかりを検索しているひとは、リベラル派とのレッテルが貼られ、戦争賛美のページやヘイトを標榜するようなページなどに関心を示しているひとは、ネトウヨというカテゴリに分類されるということになる。つまりは、そんなひとたちがネットサーフィンを試みると当然のように溢れかえるばかりの偏った情報量が、フェイクニュースも含めそのひとの考え方に影響をあたえるという結果となり、右の考え方のひとはよりライトに、左の考え方のひとはよりレフトにという二極化の傾向をますます強めることとなる。

個人情報保護法やプライバシー権などの確立により、自分の個人情報が自分の知らないところで、漏洩されたり、暴露されたりといった行為が、犯罪として立件されるケースが目立ってはきているが、その一方で、ネット上での個人の趣味や嗜好、年齢、性別、政治的なスタンスなどがAIによって、データーベース化され蓄積されていくという情報化の進展にともなう個人情報の侵害ともいえるSNS上の差別と人権侵害が増幅されるような危険な分野が情報化社会におけるネット問題だ。

単なる興味本位な発想や差別煽動を目的にネット上に誹謗中傷や差別言動をアップさせ、瞬時に日本はもとより、全世界にデーターを公開してしまう愉快犯的な犯罪へと変貌しているのがネット社会である。個人を識別するための指紋認証や角膜による個人の識別、さらには、GPSやナンバープレートを認識して車両の位置を確認したり、そこへ「本籍情報」や「住所」などのマッチングがおこり、地図上から個人が特定されていくなど、最悪の個人情報侵害という事態が、もうすでに到来しているかもしれない。