第82回全国大会が終了した。 相変わらずSNSによる被差別部落の地域情
コラム | 2025年3月5日
コラム | 2025年2月25日
昨年9月26日に袴田巖さんの再審無罪判決が決定した。2014年に静岡地裁で再審開始決定が出されたが、再審開始が確定するまでに9年、再審無罪判決まで10年の時間が費やされたことになる。この時間の経過こそが、現行の“再審法”の不備であり、早急なる法改正に向け、国会がいよいよ山場を迎えようとしている。
「えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟」が昨年結成され、現在までに377名の国会議員が名を連ねている。文字通り超党派による議連として拡大してきており、また議連をバックアップするように地方自治体からの再審法改正の賛同が524地方議会で意見書として採択されたり、216の首長が再審法改正への賛同を表明している。各種団体からも賛同は約700団体に拡大してきており、改めて法改正への気運は高まりを見せ、改正への“機は熟した”と言っていい現状だ。
しかしながら国の抵抗が強いことも事実のようだ。
とくに法務省は、再審制度の見直しを法制審(法相の諮問機関)に諮問する考えを表明し、答申を受けてから改正案を国会に提出するという動きに出ているとの報道内容だ。その法制審には論点を絞らずに諮問することが予定されていることから推察すると議論は少なくとも一年以上はかかるとみられ法改正が引き延ばしになるのではという批判が出ている。
超党派による議連も改正の中身と今国会での法改正というスピード感を求めて、法制審への諮問による議論開始と今国会での議員提案の法改正とは矛盾しないとの立場をとり、再審法改正を求めていくとの姿勢を示すなど激しい攻防が開始されたことを意味している。
再審請求における証拠開示の制度化、再審開始決定に対する検察官による不服申し立て(抗告)の禁止、さらには、再審請求の手続きの整備を中心とした“再審法”改正案が超党派による議連により準備が進められている。しかし、法務・検察側は議連の改正案については、「証拠開示の範囲が過大で、誤った再審開始決定の是正もできなくなる」との意見が根強く、しかも「なるべく時間を稼いで、世論の鎮静化を狙い、改正するとしても最小限に食い止めたい」との法務・検察側の本音も垣間見られる。
法務省は、もはや再審法改正は不可避と判断せざるを得なくなったため、法制審に諮問し、審議してもらい時間稼ぎと最小限の改正という事を目途に今国会での議員提案による改正を阻止したい構えのようだ。国会議員の手から再審法改正マターをとりあげて、「あとは法制審に任せなさい」という戦略に舵を切ったということか。法制審に議論の場を移せば、メンバーの人選も、会議の進行も、法改正の内容を検討するための資料の調整等も法務省が事務局として担うことになり、法改正を意のままにコントロールできる事は明白である。
法務省や検察側は「議員立法阻止」への動きを強めており、それに対して議連側は、「法制審による議論と議連の議員提案の法改正論議は矛盾しない」との立場で、法制審にえん罪被害者の参加を求めるなどの動きに出ており、議員提案の内容も証拠開示など重要な点に絞った形で議員立法を先行させるという戦術に出ている。
石川一雄さんは86歳を迎え、体力の低下は否めない。昨年末に体調を崩しており、袴田さんの事件にように、再審開始が実現しても検察官が不服申し立てをおこない抗告され裁判が長引けば、健在のうちにえん罪を晴らすことはできない。
「無辜(むこ)を罰するなかれ」とは、ひとに無実の罪を着せてはいけないということを意味しており、「10人の真犯人を逃すとも、一人の無辜(無実の人のこと)を罰するなかれ」と言われている。
つまり、再審が開始された時点で、検察官による不服申し立て(抗告)が断念され、一日も早い審議で、再審無罪判決が決定されなければならない。「検察官が再審決定に対して抗告するのは、公益の代表者として当然であり、再審請求審における審理、決定が適正かつ公正に行われることを担保しているとして、検察官の抗告権を排除することは、違法であり、法的安定性の見地から検察官抗告は必要である」というのが、法務・検察側の論理である。しかし、検察側に不服があれば、再審公判で主張すればいい話で、「疑わしきは被告人の利益に」の原則が認められている以上、検察官は再審公判で争うべきである。
救済されずにいる深刻なえん罪被害者である石川さんの貴重な人生の時間をこれ以上奪うことは許されない。議員立法による迅速な再審法改正が実現するか。まさに風雲急を告げる国会闘争である。まさに、“待ったなし”の闘いである。