第82回全国大会が終了した。 相変わらずSNSによる被差別部落の地域情
コラム | 2025年3月5日
コラム | 2025年3月5日
第82回全国大会が終了した。
相変わらずSNSによる被差別部落の地域情報がネットに拡散され続けていることへの対策などが議論となった。SNSを悪用して差別拡散や誹謗中傷をおこなうフェイク情報など、ネット上における人権侵害の規制や削除を求めて“情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法)”の施行後の積極的活用などが呼びかけられる大会となった。
当然のことのように悪質で陰険なSNSによる差別拡散や誹謗中傷に対して、正しい意味でのSNSの積極活用や解放同盟自身によるSNSを活用したネット上でのサイバー部落解放運動によって、対抗すべしとの闘いの方向が提起されて然りではあるが、果たしてネット文化特有の刹那主義ともいうべき粗末で愚かな現在のSNS社会を転換させることができるのか。
残念ではあるが、エセやフェイク情報、他人に対しての誹謗中傷、属性に対する差別や人権侵害というネット上での氾濫・跋扈する現状を変えることは容易ではない。それこそ21世紀最大の課題といって良いのではないかと思っている。
それは、とくに生成AIの濫用が加わることで、危険性がさらに拡大され“増悪社会”化する傾向に有るのではないかという危惧からである。とくにトランプ第2期政権がスタートし、さらに酷くなってきている要因にイーロン・マスク氏の登場が象徴していることは、火を見るよりも明らかであろう。XやYouTube、Facebookなどのアルゴリズム(問題を解決したり目標を達成したりするための計算方法や処理方法のことを言う)は、ユーザーの関心を惹きよせ、ソーシャルメディアの利用時間を延長させるためあらゆる手法を駆使していると言われている。
ユーザーを惹きつけるための近道として登場しているのが、“憎しみや恐怖”、“欲を撒き散らす”ことだと言われており、それを学習してしまったAIは、人の心の中にある憎しみのボタンを押せば、彼らはスクリーンに釘付けになると言うことを知ってしまったと言うのである。ソーシャルメディアを閲覧している時間が延び、アルゴリズムによってその間に広告をせっせと表示され、広告収入はうなぎ登り、ユーザーの数は何千万人を記録するというマスコミに次ぐ、いやいまではそれを凌ぐ第5の権力に到達している。
そして、そのマスク氏はソーシャルメディアの最強の1つであるXのオーナーであり、その彼を事実上の政権最高顧問としてホワイトハウスに招いたのがトランプ大統領である。米国はいよいよ「憎悪と怒り、下品な欲望剥き出し」の政治へ最大限の舵を切ったことを意味しているのではないだろうか。
部落問題にしても然りではあるが、最も正確で信頼できる情報が検索エンジンの上位に表示されているだろうか。答えは、まったくNOであり、部落問題で検索すれば、“暴力”“恐い”“貧困”“劣悪”というダーティで暗いイメージしか連想されないような情報が横行し、近寄りがたい存在としての「部落」がユーザーに強烈なインパクトを与えている。部落解放同盟での検索は、もう言はずもがなである。
恐怖感や近寄っては行けない地域というアンタッチャブルな情報がAIに学習され続ければ、部落に対する醜く強烈な忌避意識が形成され、「関わりたくない問題」「わたしには無関係な問題」として、ますます市民から遊離される「部落問題」になりかねない危険な領域に踏み込んでいるようである。
生成AIが加わっていくSNS社会は、憎しみや怒りが広がりネット文化の刹那主義がさらに加速され、「憎悪社会」化が肥大化する危険性をもたらし始めている。被害を食い止めるには日本一国だけでは不可能であり、国際的な連携が求められることは言うまでもない。しかし、トランプ氏登場以降、自国第一主義が強まり、民主主義や社会を不安定化させているという大きな災難が、わたしたちに降りかかっている。
これに対抗し全世界に被害をもたらし始めている現実を転換させるためにも、被差別部落がネット上にさらされ、差別と分断の映像や動画が垂れ流され続けていることをまずは食い止めることが最優先される当面する喫緊の闘いである。