水平社宣言を世界記憶遺産に リバティおおさかでシンポ

 

「水平社宣言」の世界記憶遺産をめざす大阪シンポジウムが7月11日、大阪人権博物館(リバティおおさか)でひらかれた。「水平社宣言」の歴史的意義と今日的な価値をあらためて確認し、9月の国内選考、2017年の登録をめざして世論を高める取り組みを進めていくことを確認した。

1922年3月3日の全国水平社創立大会で可決された「全国水平社創立宣言」は、被差別マイノリティ自身が出した世界ではじめての「人権宣言」。過去の同情的な融和運動を拒否し、人間は尊敬すべきものであるとして、部落民自らが誇りを持ち、自主的な解放運動に立ち上がることを宣言した。

シンポジウムでは、府連の田村賢一副委員長があいさつし「水平社宣言は被差別部落の人たちのみならず、白丁(ペクチョン=朝鮮の被差別マイノリティ)など国内外で被差別の立場にある人たちに大きな影響を与えた。薬害HIV訴訟の原告であった故・石田吉明さんも水平社宣言と出合い、自らの立場を自ら卑下することなく、逃げも隠れもせずに闘うことへの自信を深めたと話していた。世界記憶遺産への登録は私たちの決意表明。日本を戦争の出来る国ではなく人権立国にするために全力で取り組もう」と呼びかけ、府連の岡井寿美代執行委員が水平社宣言を朗読した。

リバティおおさかの朝治武館長は「宣言は700から1000枚が印刷されたと考えられるが現在は3点しか残っていない。被差別マイノリティが自ら執筆した人権宣言は水平社宣言が世界ではじめてのもの。部落民という存在に誇りを持つとともに、自由、平等、アイデンティティなどの面からも人類普遍の今日的な価値として常に参照されるべき貴重なものだ」と強調した。

静岡大学の黒川みどり教授は「当時の水平社の活動家は米騒動後の同情融和の動きがいかにお為ごかしであるのかを実感していた。それを粉砕して自らの力での解放を打ち出した宣言であることが重要」と指摘。「人の世に熱あれ、人間に光りあれ」は差別をなくすプロセスこそが大事という「永久革命」の性格を持っていると強調し、ともすれば人権一般に流し込まれようとしている今日にこそ水平社宣言の原点に立ち返ることが大事だと強調した。

府連の赤井隆史書記長は▽日本に部落差別が存在することを世界にアピールすること▽部落差別の撤廃とともに「世直し」による人権運動を創造すること、が登録をめざす意義であると強調。現在申請されているのは「水平社宣言」を含めて16件。9月の国内選考で選ばれる2件に残るために団体・個人署名を呼びかけている。ぜひ協力してほしいと訴えた。

●「世界記憶遺産」とは
正式名称は「世界の記憶」。ユネスコが主催し、危機に瀕した書物や文書などの歴史的記憶遺産を保全し、広く公開することを目的とする。1997年から2年ごとに登録事業を行っており、現在、フランス人権宣言、ベートーベン交響曲第9番直筆楽譜、『アンネの日記』など301件が登録されている。日本からは『山本作兵衛コレクション』『御堂関白記』『慶長遣欧使節関係資料』が登録されている。各国からの申請は2件以内とされており、3件以上の申請があった場合にはユネスコ国内委員会が選考委員会で2件にしぼる。今年9月の選考委員会で決定され、ユネスコの審査に合格したものが2017年の夏頃に世界記憶遺産として登録される。

●「全国水平社創立宣言と関係資料」
①「全国水平社創立大会 綱領 宣言 則 決議」(3点・1922年3月3日)②奈良県柏原水平社荊冠旗③チラシ「全国水平社創立大会へ」(3点・1922年2月21日)④『学校日誌・崇仁尋常小学校』(1922年3月2日記述分)⑤『阪本清一郎備忘録』(1922年2~3月)⑥全国水平社創立発起者集合写真(1922年3月3日)⑦『全国水平社連盟本部日誌』(1922年3月3日記述分)