部落の高齢化、若い人たちの部落離れは、いまや全国的な共通の問題として挙げ
コラム | 2024年11月16日
命を守る人権のまちづくり運動へ
2019年選挙イヤーの年が明けた。
昨年の12月12日発表された「今年の漢字」が「災」だ。6月には大阪北部で震度6弱の地震がおき、高槻や茨木に被害が集中、7月には西日本豪雨が発生し、泉州地区に多くの被害が発生、河川の氾濫や浸水害、土砂災害が発生し、甚大な災害となった。いまだブルーシートが張り巡らされいるという状態であり、まさに“災”という言葉が当てはまる一年となった。
被害に遭われた皆様へ心よりのお見舞いと被災地においては、1日も早い復興と、穏やかな日々が早く訪れるよう府連としても全力で支援したいと思っている。
あらためて命を守るという視点やまちづくりや防災の観点を今後の人権のまちづくり運動の基本の柱に据えるべくとりくみを推進していくものである。
自己責任、生産性という名の差別
2019年の本年は、昨年から話題とされてきた“自己責任”と“生産性”というふたつの差別的思想に対して、それを凌駕する理論構築と市民運動の展開という年にしたいと思っている。4月の統一自治体選挙や7月の参議院選挙、11月末予定の大阪府知事選挙や大阪市長選挙においても選挙争点のひとつとなるよう働きかけていくことが重要である。
「自己責任」とは、貧しい生活実態や仕事がないという状態、生きにくい状況にあるのは、個人の責任であり、個人の努力不足や甲斐性がないからだと個人責任を追及する優しくない差別思想だ。この思想が日本全体を覆い尽くすように広がってきていることに危機感を持ち、誰もが社会参加する権利があり、何人たりとも貧困や社会的排除から脱却するための社会支援や、応援態勢が確立された社会をめざすという方向へ転換するきっかけの年にしたいと思っている。
大阪万博の開催決定の決め手はSDGs
2025年、大阪で万博が開催されることになった。この誘致に成功したのは国連で提唱された「国連持続可能な開発サミット」において、 17の目標を掲げたSDGs(エスディージーズ)が達成された社会をめざす為に大阪万博を開催したいという提案が世界各国から賞賛され、それが決め手のひとつになったとも言われている。このSDGsの基本理念は、「誰ひとり取り残さない」社会の実現であり、「すべての国々のすべての人々」が基本となっており、「自己責任論」とは相反する考え方であることを強調したい。
ついで「生産性」という優生思想につながる危険な兆候に警鐘を鳴らしたいと思っている。
この世に生を受けた者、すべての命に意味があり、意味のない命など存在しない。生産性を判断基準に、命の価値に差をつけてはならないことは当然であり、主要な生産関係から除外され社会的に排除されるような差別社会に終止符を打ち、人に優劣をつけるような格差社会を転換させるため、一支部一社会的起業による市民活動の領域をさらに広げていく年にしようではないか。
今年の解放運動の4つのキーワード
ふたつの差別的な思想と対決するための今年の解放運動のキーワードは4つだ。
その第1は、選挙イヤーに勝利する年にしたいと言うことだ。4月の統一自治体選挙や7月の参議院選挙、11月末予定の大阪府知事選挙や大阪市長選挙、また大阪市廃止を画策する都構想の賛否を問う住民投票の可能性もあり、この一連の政治決戦勝利に向けて政治・選挙闘争に全力を挙げることだ。
部落を覆い始める「生きにくさ」
第2のポイントは、多様性が増してきた被差別部落の地域経営を本格化させることだ。
直接的な部落差別は影を潜めたが、“生きにくさ”が部落を覆い始めており、人間関係の希薄さや人情、包み込むような部落の温かさも減退の傾向にある。「誰かを置き去りする部落はない」との視点で、すべての住民とつながる共済や隣保館活動などの市民運動にチャレンジする年にしたい。
第3のポイントは、同和対策で培った教育無償化運動や総合評価入札制度、食肉や皮革産業による産業振興などの“特別対策”という過去を現在につなげ合わせ、それを社会運動にまで高めるきっかけを統一自治体選挙や参議院選挙で仕掛けをつくれないかという構想である。「地域の社会的起業」が、さらに広がった社会運動に、世直し運動に、レベルアップすべくチャレンジしたいと思っている。
ある分野に特化した人材育成・発掘を
第4のポイントは、人材の育成・発掘を新たなキャラクターづくりとして発展させられないかという発想だ。部落解放運動全般を理解したリーダーづくりということではなく、ある分野に特化したユニークなキャラクターが発掘できないかと思っている。どんな分野でもまんべんなくこなせる万能なオールラウンドプレーヤーではなく、ある限られた分野に高い見識を有する専門的活動家の育成にチャレンジしたい。福祉・教育、まちづくりなど多種多様な分野で専門的にとりくめる“職人”的人材の育成システムの開発にまで高めることが出来るかどうか、まさに正夢となるような2019年にしたいものだ。