大阪府で人権3条例

人権に関わる3つの条例が10月25日、大阪府議会で成立した。「人権尊重の社会づくり条例」の一部改正、「性的指向及び性自認の多様性に関する府民の理解の増進に関する条例(LGBT条例)」、「人種又は民族を理由とする不当な差別的言動の解消の推進に関する条例(ヘイトスピーチ条例)」の3つ。

府連は5月の吉村知事との政策懇談会で条例改正を求めていた

人権尊重の社会づくり条例は1998年に施行。この条例のもとに大阪府では同和問題、女性、子ども、障がい者などの人権課題について個別の条例が制定されとりくみが進められきた。
しかし、この条例には「府の責務」のみが規定されており、府民や事業者の責務は規定されていなかった。複雑多様化する人権課題に対応し、国際都市にふさわしい環境整備を図り、人権社会を実現するためにはその担い手である府民、事業者の協力が不可欠であるとして、今回条例を一部改正し府民と事業者の責務が追加された。
第3条として「府民は、人権尊重の社会づくりの推進について理解を深め、その上で府の人権施策へ協力する努力義務」があることを規定。第4条では「事業者には、事業活動をおこなうにあたり、人権尊重のためのとりくみを推進する努力義務」があるとした。

LGBT条例は、性的マイノリティの人権問題への社会の理解がいまだ進んでいない現状を踏まえて、国の法整備を待つことなく、喫緊の課題として府自らが差別解消に向けたとりくみを進めることを目的に提案されたもの。
前文で「性の多様性に関する無理解により、個人の社会参加の機会が制限されるようなことがあってはならず、性的指向及び性自認を理由とした差別は決して許されない」と明記。
理解増進に向けて啓発・教育、相談への対応とともに、府の実施する事業において多様性に配慮するよう努める(第7条)などが規定された。
ヘイトスピーチ条例は、国のヘイトスピーチ解消法施行後も、依然として差別的言動が見られ、特にインターネットを利用した悪質な事象が発生していることを踏まえて提案されたもの。
最大の特徴は第7条で「何人も、人種又は民族を理由とする不当な差別的言動をしてはならない」として差別的言動の禁止規定が明記されたこと。しかしながら大阪府人権施策推進審議会の答申が示した「(ヘイトスピーチに対して)罰則等を科すことは適当と考えられない」などを理由に罰則規定は設けないこととなった。
府連はこの3つの条例制定に向けて募集されていたパブリックコメントに意見を提出。ヘイトスピーチ・不当な差別的言動は部落差別でも多発しており、特にインターネット上では鳥取ループ・示現舎によって部落の地名や部落を暴く動画が公開されているなど現状があること。
法務省が部落の所在地情報について削除の対象とするとの通知を全国の地方法務局などに出していることを踏まえて大阪府人権尊重の社会づくり条例に差別禁止規定を設けるべきとの意見とともに、部落差別調査等規制等条例についても改正を検討すべきとの意見を提出していた。